春ノ巻 穴見と花見 6
「どうも~、
翌日、気の抜けた声をかけながら
「いつも急かすようで悪いわね、佐吉」
「いえいえ。ところで、一九先生は?」
「箱根に取材に行ったわ。一九が帰ってきたら、また瓦版を書かせるから、その時はよろしくね」
「任せてください! 一九先生はうちのお得意様ですから、他の仕事よりも最優先でやらせてもらいますよ! んじゃ、俺はこれで失礼しま~す」
そう言って、佐吉は帰って行った。
その
「まだ明るいですし、このまま
一九は箱根の宿場町で目当ての筍を買い、急いで妖怪の里に向かうことにした。
太陽は空の真上にきたあたりで、
(先ほど、一ツ目地蔵を過ぎたので、もうそろそろだと思うのですが……)
「あ。来た」
木の上から声が聞こえたので、一九は顔を上げる。そこにいたのは、額に
「鎌鼬
「こっちに向かってくる人間の気配がしたから、追っ払ってやろうと思って来ただけだよ」
「え? 私、追い返されるんですか?」
「
鎌鼬は「よっと」と軽い身のこなしで、音もなく一九の前に降り立つ。
「というか、頭領が
「あぁすみません。途中、酷い雨に降られてしましまして、
そう言って、一九は旅の荷物の中から文を取り出して、鎌鼬に見せた。
「要点のみで、
「あぁ、これ、頭領が送った文。でも文が届いたなら、何で返事を
「
「はぁ!?」
鎌鼬は驚いたように声を上げた。一九は思わず一歩退く。鎌鼬は額に手を当てる。
「あぁごめん。三ツ目鴉に文を
「でも、見越殿はお怒りなんですよね?」
一九が心配そうに問いかけるが、鎌鼬は気にするなと手を振る。
「今回に関しては頭領の
鎌鼬は
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