森の仲間ー2
夏休みに入り、保育園と幼稚園に子供達を送っていくと、久しぶりの自分の時間が持てる。
そんな時は、季節も良いし、森に入り浸っている。
北川神社の境内から森に入って、わずか200メートル程でこの森は分断されてしまった。
そして、片側一車線の道路を渡り、森の公園に入る。
公園の向こう側にはテニスコートがあり、道路とその間には幅20メートル程細長く森が残っている。
その先は、フェンスで仕切られた原生林へと繋がっている。
この幅20メートルの細長い森には、大きな意味がある。
それは、まだうまく説明できないが、生物にも人間にもだ。
夏休み前に『みなみの森研究会』を訪れた事で、私は改めて森の何が知りたいのか考えたが、答えは全く思いつかない。
今、私のやっている事はお遊びに過ぎない。
森で見た物をノートに書き出し、分布図を作り、スマホで写真を撮るだけだ。
学者になりたいとか、研究員になりたいとか言ってはみたものの、所詮はこんなものかと自信を失っていた。
それでも、毎日の様に森に入らずにいられない。
心が落ち着くし、毎日発見があって心が躍る。
そうしているうちに、森で顔見知りができた。
北川神社の境内とその周辺で、いつも鳥の写真を撮っている老夫婦と挨拶するようになった。
さらには、いつもどんぐりや松ぼっくりや植物を籠に入れて、森から出てくるアラフィフ主婦とも知り合った。
森の素材でオーナメントや押し花アートを作っているのだそうだ。
そのおかげで、植物に関する知識が豊富だ。
夏休みになると、昆虫の観察をする小学生も増える。
そんななか、森の公園の細長く続く森で、中学生くらいの男の子に出会うようになった。
一日何度も見かけるその少年は、いつも樹の下や日陰で俯き、何かを探しているようだ。
ある日、勇気を出して声をかけてみた。
「いつも、何をしているんだ?」
その少年は、私を見るなり細長い森の奥に逃げていった。
翌日もその翌日も森に来ていたが、私が声を掛けると逃げていく。
ある日子供達を連れて森の公園に行った時、森の入り口でその少年にばったり出会った。
「Hi!
毎日熱心だな。
何か観察してるのか?」
ケイトまでその少年に興味を示しだし、引けなくなったのだろう。
少年が初めて口を開いた。
「キノコを見てたんだよ」
でかしたぞ、ケイト!
こうして、この少年との交流が始まった。
そして、この出会いが、私の未来だけではなく、過去にも繋がっていく。
ーKerlyー
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