ソロ活動ー16

 やっぱり、私はレイちゃんとショウくんが一緒じゃないとダメなんだ。

自分の思うように音楽が奏でられない。

そう実感した。



中途半端に激しいロック。

上の意向で書き換えられたと思われる数カ所。

歌詞や感情と合わなくなってしまった曲調。


そんな事に我慢ができなくなり、

さらには、デビュー当時の尖っていたアシーナさんが好きだった私は、

ついつい挑発してしまった。



「たった1日音を交えただけでは、ここまでよ。

私としては、もっと詰めたかったんだけど。

自分らしさなんて出せるまで行かなかったよ」


あの日以来ちょっと優しくなったと思っていた美由紀がこう言う。


「何言ってるのよ。

あれだけ波風立てておいて!

しかも、時間がないって急き立てたのは、こっちの方じゃない」


レイちゃんとショウくんも、


「まさか、他人様にもあれをやるとはな!

コイツに煽られたら、かなりムカつくからな!」


こう言う。





 ショウくんは四宮の涼ちゃんとのコラボは一曲だけで帰ってきた。


「自分の作った曲を、歌の上手い人があそこまで感情込めて歌ってくれたら、感動ものだよ」


そう言いながらも、今回は、コラボでのアルバムの話やソロアルバムの話は断ったらしい。


それでも、ショウくんはその後何度か、四宮の涼ちゃんと共に曲を書いたり、レコーディングでギターを弾いたりする仕事は引き受けている。


今は、感情重視の優しい曲や切ない曲しかできないと言いながら、時には爆音に身を置きたくなると言って、ライブでは弾けている。




 レイちゃんは相変わらずだ。

でも、自分以外の人を少し尊重できるようになってきた。

大きな成長だ。


行きつ戻りつのホワンのアルバム作製に、何も言わず付き合っていた。

そして、ついに完成し、公開された。


大学4年生になっていたホワンのメンバーは、あるオーディションに受かり、就職せずに音楽活動をすることを決めた。



私たちも、少しでもホワンの露出が多くなるようにと、会う人会う人に宣伝をしている。



そして、私たちがラジオに乱入した修平パパは、その後すぐにお昼時のラジオ番組の仕事と、ローカルテレビの夕方のニュースの週一のコーナーにロケ担当としての仕事が舞い込んできた。


修平パパも協力してくれて、自分のラジオ番組でホワンの曲を流してくれるようになった。

例のみゆのキランキランした曲が話題になった。


ホワンのアルバムのプロデューサーとして名を連ねたレイちゃんに、その後数件のオファーが来ているらしい。

レイちゃんは、それをほぼ断っている。

ただし、若手にはスタジオを格安で貸し出し、ちょっとした手助けと助言はするが、まずは好きな様に作ってみろと言って勝手にやらせている。

私たちが、そうさせてもらったように。




 そして、私たちは。


私とショウくんは、土曜日には一日子供達と過ごすことにしている。


日曜日にはほぼ一日中、必ず3人でレコーディングスタジオに詰めて、まずセッションから始める。

そこからインスピレーションを感じた物を、どんどん膨らませていき曲を作る。

あの頃のようにスピード感はない。


そして、あの頃の音楽とも違ってきている。

でも、それは、あの頃とは違う感性になってきているからだと感じる。

今の私たちらしいはこれなんだと思えるようになってきた。


ただ時々懐かしくなり、3人でひたすら爆音に身を置いていることもある。




 そして、私は。


2人の子供たちと学業に専念する為に、ソロ活動は全て断ってもらっている。



ーKerlyー


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