最初の呪縛ー8

 私は、ケイトとシオンを伴って、パリ発成田行きの飛行機に乗っていた。


「ひとりで帰れるわけないじゃん」


と言って、また、ロンドンにいたボスに泣きついた。



 長いフライトの中、私はボスにここ1ヶ月位に起こった事を話していた。

ルーの映画の音楽の事、海くんのバンドとの出会い、オーケストラを使いたい事、そして、呪縛の解放。


「明らかに、レイちゃんとショウくんは心境の変化を感じている」


「カーリー、お前はどうなんだ?」


「たしかに、子供達も新しい環境に慣れてきたし、ルーが前より会いに来られるようになったし、お勉強も楽しいし、最近友達もできた。

私、今とても幸せかも。


でも、呪縛って何?

私の事なのかなって思うと、悲しくなっちゃう」


「でも、違うって言われたんだろう?」


「でもさ、私っていつもやり過ぎちゃう傾向にあるって、皆に言われちゃうけど、夢中になるとやめられないの。

他の事を切り捨ててでも、その事に集中したい」


「それは、昔からそうだろう?」


「その事で、レイちゃんやショウくんも巻き添えにしちゃう。

それは、ボスと出会う前からだったのかも。

まだ、バンドにも入れてもらえなかった頃、私は、レイちゃんのパパや大人達に認めてもらいたくて、色んな楽器をめちゃくちゃ練習した。

いつの間にか、レイちゃんとショウくんは、私に対しても音楽に対しても、目の色が変わってた」


「それは、アイツ等に良い影響を与えていたって事じゃないのか?」


「おまけに、私が家を追い出されたことで、3人でこれで喰っていくって腹括るしかなくなった。

私はふたりが負けず嫌いなのを知っていながら、色んな手を使って煽ってた。

ふたりのモチベーションが落ちないように」


「それは、お互い様だろう?」


「でも、私は、いけないこともやっちゃう。

誰かが自分から離れていかないように」


そう言って、ボスの肩に首をちょこんと傾げる。


「こういうところだろ?

すでに俺達はお見通しだぞ」


「ルーにも言われちゃった。

お前には、あざとくて計算高い一面もあるって」


「俺から見たら、お前たち3人はいつも煽り合ってただろう?」


「レイはお前をよく泣かしていた。

お前に酷い事を言って、感情を引き出していた。

ショウもそうだ。

叫ばないと魂が出ないのかって、レイを怒らせていた。


お前もよく言われていただろう?

魂を出せって。

そうすると、出なかった声が出ていたじゃないか」


「魂が飛び出るような音楽を演りたいんだって、レイちゃんがよく言ってた」


「なんて熱い子達なんだって、俺はそこに惹かれた」


「私の縮こまった魂が飛び出るのを感じていた」



「そこなんじゃないのか?

お前達らしさって」




 

 日本に帰ってきた。

その日ボスは、私の家に泊まってくれた。


そして、翌日、召集がかけられた。



ーKerlyー




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