最初の呪縛ー7

 私には、5歳年上の従兄弟がいる。

母の姉である幸子おばさんの一人息子の大輔くんだ。

大ちゃんと呼んで、小さい頃からよく遊んでもらっていた。

よく一緒にキャンプや海水浴に行っていた記憶がある。

私と母の関係もよく知っていたし、私をよく可愛がってくれた。


大ちゃんは変わり者だ。

子供の頃から、他の子達とはどこか違っていて、面白かった。


ペットと言って飼っていたのは、森で入手してきた芋虫や毛虫だ。

羽化したら何になるのか、よくふたりで観察していた。

私の森好きにも影響を与えてくれた。


また、川原の石積みアートに魅せられ、テレビの取材を受け、その時に河原の石積の意味を懇々と語り、周囲を驚かせた。


中学生になると、夏休みにはひとりで自転車旅やキャンプをしていた。

高校に入ると、ネパール人が経営するカレー屋さんでバイトしていた。

そして、そこに置いてあったシタールにハマっていた。

そのお店の常連の大人達とバンドを始めた。



 大ちゃんは、私が小6の時に、急に人が変わったかのように大人しくなったのを心配してくれていた。

ピアノをやめさせられたことを知って、今は使っていないという小さな音楽再生プレイヤーを、私にくれた。

そこには、様々な音楽が何百曲と入っていた。

クラシック、ジャズ、ロック、民族音楽、J−Pop。

新しい物に古い物。


「今のお前には、音楽が必要だ。

俺の趣味だけど、よかったら聴いてくれ」


毎日聴いた。

心の落ち着く時間だった。


たぶん、この小さな音楽再生プレイヤーが、私の音楽の礎のひとつになっている。


大ちゃんは、私が中2になった時、東京の大学に行くために家を出た。



 

 杉崎くんの家に毎日通うようになった私は、最初のうちはせめてピアノに触ることができれば嬉しかった。

杉崎くんのバンドでは、時々キーボードのお誘いがあったが、極稀だった。


ほとんどの時間を、杉崎くんのお父さんのバンド仲間と過ごしていた。

そのうち、歌を歌わされ、ベースやドラムやギターも教えてくれるようになった。

毎日なにかしらの楽器を奏でていた。

家に帰ってからも、夜中にこっそり抜け出し、大ちゃんが置いて行ったギターを森に持っていき練習していた。


「モノにするのが速いな」


とか言われると嬉しかった。


それは遊びに近かった。

でも、音楽の中の一つになる事が、バンドのメンバーの一人になることが、このうえなく幸せな時間だった。

時には、感動で涙することもあった。

そんな私の頭を、大人達がワシャワシャと撫でてくれるのも嬉しかった。



 しかしだ!

どんどんいろんな楽器が上手くなって、大人達から受け入れてもらっていた私を、目の敵にしている奴等がいた。

レイちゃんとショウくんだ。




ーKerlyー



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