足りない音色ー10
「ねえねえ」
少し緊張した面持ちではあるが、いつもの調子で話し出すカーリー。
「最近ふたり共、私に秘密にしてることない?」
「なんだよ?
お前に秘密にしてることがあったところで、何が悪いんだよ」
「レイちゃんは、ちっとも彼女を紹介してくれないし」
「彼女から内緒にしてほしいって言われてるんだよ。
大体、お前に彼女を紹介したことなんて、一度でもあったか?」
「いつも冷たいなー、レイちゃんは」
いつものレイちゃんとカーリーの会話だ。
「ショウくんだって、最近明るくなったけど、彼女でもできた?
それとも、一緒に寝てたっていう男の子とか?」
俺は、レイちゃんを睨みつける。
「そういう情報だけは早いじゃないか」
「最近一緒に飲みにも行ってないし、なんだか寂しいな」
「先月行ったばかりだろ」
「何だよ!何かあったのかよ?」
「なんていうか、あの頃はお互いを知り尽くしてたっていうか」
「一緒に暮らしてたからな、何年も」
「今は一緒に曲作ることもなくなった」
カーリーが核心をついてきたな。
「お前だって、ひとりで映画の曲作ってるだろう?」
「それぞれが作った物がここに入ってるじゃん。
それって聴いたことある?
私は聴いてない。
その日が来るのを待ってる」
「俺も聴いたことはない。
でも、大体はわかる」
「そのことなんだけど」
俺は、加那や空の事、そして花のシェアハウスでの事を話した。
「今の俺は、愛とか祈りとか応援とか、そんな曲が作りたい。
それが俺たちらしくないっていうなら、それでいい。
レイちゃんとカーリーが演りたくないなら、俺はひとりで作る。
その後の事は、今は考えてない」
「それでいいんじゃない。
それに私は、ショウくんが作ったそういう曲聴かせてほしい」
「今までだって、バラード曲はほとんどショウが作ってただろう?」
「それに、レイちゃんだって前向きな曲作ってるし」
「なんだよ。カーリーお前こっそり聞いてるのかよ?」
「違うよ!
歌詞を書いた紙がいつも、ここに置きっぱなしになってるじゃん。
あの歌詞好きだよ」
「こっそり見てるんじゃねーよ」
「俺たちらしいって、いったい何なんだろう?
爆音か?
盛りに盛って、練りに練ったクセの強い曲か?
いつも怒ってて、時にはクレイジーで、尖った歌詞か?」
ーShowー
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