Truth〜枝葉のように広がる感情ー11
「空!」
立ち上がって名前を呼んだ俺に気付いて、空はベントンの腕を振り払って逃げた。
俺は、後を追う。
店を出たすぐの所で、空を捕まえた。
手足をバタバタさせて逃げようとする空を押さえつけた。
「大丈夫だ!少し話をしたいだけだ」
身を震わせて泣き出した空。
ラブホ街に程近い通りを行き交う男女が、遠巻きに見ている。
通りかかったタクシーを停める。
「どちらまで?」
俺は実家暮らしだ。
空の家も知らない。
練習場の住所を告げる。
レイちゃんは、今夜は彼女の家だ。
「もう終わりだ。
誰にも知られたくなかったのに」
と言って泣き続けている空。
元軍人でがたいのデカいアフリカ系のベントンの腕から振り解いた空を、タクシーの中で、今は俺が肩を抱いている。
練習場の合鍵で鍵を開け、一階のリビングのライトを付け、空をソファに座らせる。
涙をこぼしながら、俺の目を見ようともしない空。
ティッシュの箱を渡す。
なんとなく状況は想像できた。
「ちょっと待ってろよ」
そう言って、二階のレイちゃんの家に合鍵で入り、酒を漁った。
今日もまた度数の高い酒が欲しい。
手当たり次第に酒瓶を手に取り、階段を降りる。
空は少し落ち着いたように見えた。
手に取ったブランデーを安っぽいグラスに無造作に注ぐ。
「飲むか?」
そう言って、空にブランデーの入ったグラスを渡し、俺は味わいもせず一気に喉に流し込む。
空は少しだけ口をつけて、
「キツっ!でも、旨っ!」
落ち着いたのか、開き直ったのか、少しいつもの空に戻ったような気がする。
「アイツとはいつからだ?」
「初めて」
「どこで知り合った?」
「SNSで」
「じゃあ、俺に感謝しろよ!
アイツが何て呼ばれているか知ってるか?
ムキムキ絶倫ソルジャーだぞ。
ついて行った男の子が、もう勘弁して下さいって言うまで何度もヤラれたって噂だぞ。
それに、女の子を同時に3人持ち帰ったっていう噂もある」
顔面蒼白になる空。
「俺も誘われたことはある。
アイツは、穴があれば誰でも良い奴なんだよ」
「知らなかった」
また泣き出す空。
ティッシュを渡す俺。
「で、ショウさんはヤッたの?」
「断ったに決まってるだろう」
まだ、俺の顔も見ない空。
「SNSとかネットで知り合った奴と、よく会ったりしてるのか?
そういうのって危険もあるだろう?」
「今回で2回目」
しばらく沈黙の後、
「それより、ショウさん、どうしてはっきり聞いてこないの?」
ーShowー
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