Truth〜枝葉のように広がる感情ー10

 あんなに「僕も誘って」とか言っておきながら、空は俺たちの誘いの三分の一は断ってくる。


「たまには、ふたりで込み入った話もしたいんでしょう?ふん」


空は、他人の話にでも涙する程感受性豊かで、人を気遣って気を利かせていたりもする。

人当たりもよく、友達も多い。

本当に良い子で、人気者でもある。

甘えたり、時には少し毒を吐いてみたり、人の惹きつけ方を知っているのかもしれない。



 夏休みに入って、後輩バンドのホワンのライブを観に行った。

新曲を披露して、その反応を見る。

良い感じだ。


この日はぐっさんのライブハウスで少し飲んでから、近くのバーに行った。

俺たちのライブも観に来てくれるバーのオーナーはイギリス人ということもあり、外国人のお客さんも多い。

そして、外国人目当ての女の子も多い。


レイちゃんに時々ナンパ目的で、俺やホワンのメンバーは誘われて、このバーには来ていた。

しかし、最近彼女ができたせいで、すっかり付き合いが悪くなった。



 この日は、ホワンのレンとしゅーとにせがまれ連れてきた。

なのに、途中から知っている女の子達を見つけ、彼女達と飲み出した。


俺はカウンターで、バーテンダーのエマと話をした。

彼女はカナダ人で30代、冬は雪山でスキーのインストラクター、夏は山を降りてバーテンダーをしているという。


 内心ガツガツしながらも緩くナンパするレイちゃんやホワンのメンバー達と一線をおいて、いつもカウンターで飲んでいた俺に、彼女が話しかけてきたのが出会いだ。


「あなた行かないの?

ここって外国人の男の人が、日本人の女の子目的で来ることが多い。

あなた達は逆なの?

外国人の女の子狙い?」


と話しかけてきた。


「そんなじゃないよ」


「あなたは、なぜ行かないの?」


「俺は、しばらく恋愛とかはいいかなとか思ってるから」


「私と同じね。

私は、数ヶ月前日本人の彼氏に振られてハートブレイク中」


「なんで振られちゃったの?」


「性欲強すぎるんだって?」


「まじで?そうなの?」


「それと、私の下ネタも嫌いなんだって?」


「その日本人の彼氏、クソ真面目だったとか?」


「屈強で真面目な山の男で、私の理想に近い人だった」


「エマ、路線変更した方がいいんじゃない!

クソ真面目な男と性欲の強過ぎる君って、なんだか想像できないな」


「試してみる?」


エマから誘ってきた。


「言っておくけど、私の理想は屈強な山男だから」


「こっちも言っておくけど、セフレなら」


「Deal!」


何度かエマと寝た。

でも、エマはレイちゃんとも寝ていた。

ふたり共エマと寝るのはやめた。

俺たちは、エマの理想から余程かけ離れているのだろう。

全く後腐れはない。



 流れ次第では、もう一度エマとなんて思いながら、カウンターで話していたら、ベントンという男が店の奥から現れた。

男の子の肩を抱いている。

俺は、コイツに何度か誘われたことがある。


カウンターの横を通りかかった時、ベントンの相手の男の顔が見えた。


見たことのある顔だ。

それどころじゃない、知り過ぎている顔だ。




「空!」



ーShowー



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