Truth〜枝葉のように広がる感情ー9
ビールをとっくに飲み干し、ふたりでバーボンをストレートで飲む。
時間も気にせず、加那ととりとめもなく話をした。
加那は言う。
「今まで、こんなに本音で話したことがなかったと思う」
俺には、何も言わなくても、わかってくれて感じてくれる存在がいつも近くにいる。
アイツらには感謝しているし、何よりも大切な存在だ。
でも、だからこそ口に出して話さないこと、言えないこともある。
自分は大丈夫。
自分は先に進めている。
そうテンションを上げて、毎日を過ごしている。
でも、
負の感情に支配されてしまうこともある。
まだ痛みを抱えていると実感して墜ちる時もある。
そして、
過去と対峙できず、まっ白に戻ることもある。
そんな自分を情けなく思ったりもする。
でも、俺達は、まだ途中なんだ。
気持ちの整理も、未来への目標も、人生も。
加那にも感じて欲しかった。
心の整理もケリもつけなくていいんじゃないかってことを。
早朝気が付いたら、加那の部屋のラグマットの上で、ふたりで転がっていた。
話しながら飲んだバーボンが効いたのか、頭が痛い。
俺は加那を起こし、また地下鉄の駅に向かって歩く。
それから、俺達は時々ランチにふたりで出かけたり、一緒に帰ったりするようになった。
時には他愛のない話をして笑ったり、時には深刻な表情で話したり。
そんな俺達は噂になっていたそうだ。
「あの飲み会の日から雰囲気変わった」
「そういえば、あの日ふたりきりで帰って行った」
「もしかして付き合ってる?」
「不倫ってこと?」
でも、そんな俺と加那のことを、特に面白く思っていない奴がいた。
「僕って、ショウさんと加那ちゃんと仲良しだと思ってた。
なのに、何も言ってもらえないんだ。
なんだか悲しいな」
空だ。
「何のこと?」
「結婚して子供もいるショウさんと加那ちゃんが、不倫してるって噂になってるよ」
「えっ!何それ?」
「ねぇ、どうなの?
僕にも内緒にするわけ?」
その日の放課後、空を誘って3人で飲みに行った。
「空!お前、口は堅いか?」
「まあね!
言って良い事と悪い事位はわかってるよ」
「本当でしょうね?」
俺と加那がパートナーを亡くしているということや、お互い話をして共感することが必要だと思っていることを、空に話した。
空は、時折涙しながら聞いていた。
「俺はみんなに話すよ、この事。
加那はどうする?」
黙り込む加那。
「大丈夫。俺だけが話すよ」
「良い方法があるよ。
僕がそれとなく噂流しておくよ」
本当に、空の口の堅さは大丈夫なのか?
「でもさー!
それじゃあ、ショウさんと加那ちゃんが、ただ付き合ってるってだけになっちゃうじゃん?
なんだか納得いかない」
空。
お前は、加那のことが好きなのか?
ーShowー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます