Truth〜枝葉のように広がる感情ー8

「俺には子供達がいた。

だから、ここまで来られた。

加那には、そういうのあったの?

現に、新しい道に進み出したわけじゃない」


聞きにくかったが、敢えて聞いてみた。


「私は、高齢者介護施設で働いてたんだけど、仕事に行けば気が紛れるかなって思って頑張ってた。

でも、ある日上司に呼ばれて、少し休んだらって言われたの。

どうしてって思った。

だって、失敗もなく一生懸命やってたつもりだったんだもの。

でも、上司曰く、時々ボーっとしていて、利用者さんが置き去りになってるって。

生きている人間相手で、しかもこちらから注意を払ってあげないといけない人が多いから、事務的な部署に移る手もあるわよって。


しばらく仕事を休むことにした。

でも、そのまま退社することにした。

さらに自信をなくした」


「で、その後はずっと家にいたの?」


「何ヶ月かは家でボーっとしてた。


そんな私を見て妹が、近所に新しいカフェができたから行ってみようって、誘い出してくれたの。

久々の外出だった。

それからかな!

妹や親友がカフェ巡りに誘ってくれるようになったの」


「それで、学校の近くのカフェにやたらと詳しいわけだ」


「そんな風に私を連れ出してくれる中に、彼氏やチームメイトがよく通っていたスポーツトレーナーさんがいて、所属している病院で補助をしてくれる人を募集してるから、来いよって言ってくれたの。

はじめは、彼の事思い出しちゃうんじゃないかって抵抗あったけど、受けてみたの。

知らない世界に入って、気が紛れた」


「それで、理学療法士の勉強始めたんだね」


「そうね。

ある日、そのスポーツトレーナーさんに頑張ってるねって言われて、私、


『おかげさまで、毎日覚えることも多いし忙しいから、彼氏のことが忘れられる』


って言ったの。

そしたら、彼が、


『そっか!忘れたいよね!でも、彼の事覚えておいても欲しいな』


って言われた。

その言葉に最初は腹も立ったけど、私が忘れちゃったら、その時彼は本当の意味で死んじゃうって思った。

だから、忘れちゃうのは違うって思った。

でも、辛い。

まだわからない何かにケリをつけないと、このループから逃れられないって感じるの」



忘れたいけれど、忘れてはいけない。


加那も同じ様に悩んでいたんだ。


俺は、真澄を忘れることはないだろうと覚悟は決めた。

でも、自分の心と折り合いをつけながら、それをやっていく方法はまだ見つかっていない。


加那と一緒に、その方法を見つけ出せるかもしれないと思った。



 加那は、ある意味ソウルメイトかもしれない。

お互いまだパートナーを引きずっている。


恋愛とかセックスで汚してはいけない存在だと思った。



ーShowー



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