Truth〜枝葉のように広がる感情ー7
「今はまだ、喋れるのはここまでかな」
泣きじゃくりながら話す加那。
ティッシュを渡し、しばらく待つ。
「その後は蚊帳の外で、葬儀まで会えなかった。
とてもデリケートで難しい状況なのは、今ならわかる。
でも、何もできなかった自分と、そんな決断をしたご両親にも、そのうち怒りみたいな物が湧いてきちゃって。
そんな自分に自己嫌悪も湧いてきて」
同じだ。
悲しみや喪失感の後に来る、罪悪感に怒りに自己嫌悪。
また涙をこぼす加那。
加那の近くに座り、背中を擦る。
しばらく、加那の涙が乾くのを待つ。
その後の俺達の話は、2年が経った今の心境の変化だった。
「自分では、もう先に進んでる気分だったんだけど、時々悲しさとか愛おしさとか後悔が浮かんできて、どうしようもなくなる時がある。
ショウさんは?」
「あるよ。
今も先に進もうとする気持ちと、そういう負の感情とかが、いつも行き来してる。
あの時こうしていればとか、こう言ってあげればよかったとか、ほんの些細な事なんだけど、考え始めたら止まらなくなる。
大きな後悔とかは、一生心から離れないんだろうなって、最近は諦められるようになったかも」
「わかる!
でも、私には諦めるは、まだできないかな」
同じ様にパートナーの突然の死を経験しているとはいえ、状況も残されたものもそれぞれ違う。
お互いの経験が、お互いの参考になるとも思えない。
それぞれが自分の話をし、相手の話を聞く。
そんな時間だった。
時には言葉が詰まり、涙が零れ落ちる。
「加那は今まで、こういう話できる人はいた?」
「私にだって親友はいるし家族もいる。
彼氏の友達とかも、未だに連絡くれる人もいるし。
でも、『頑張れ』とか『早く忘れろ』とか『ケリをつけて先に進め』とか言われることもあるけど、違うんだよね。
そう思わない?」
加那は、周囲の誰かが言った『ケリをつけて先に進め』が、ずっと引っかかっていたんだろう。
「たしかにね!
でも、今思えば、俺の周りには、そういう人は少なかった。
みんな、ただハグして時にはキスしてくれる人が多かった。
ほら!海外生活長いから」
冗談っぽく言ったら、少し睨まれた。
でも、すぐに微笑んだ加那。
「ショウさんに、しばらく一緒にいようって言われた時、心が何ていうか揺れた」
俺も、周囲の人達からよく言われていた言葉だ。
特にレイちゃんとカーリーだ。
ーShowー
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