Forest〜枝葉のように広がる感情ー3
あちこち探索し、時にはしゃがみ込んで観察し、ノートに記入する私にただ同行してくれる谷口先生。
そのノートを覗き込んで、
「ほんとに好きなのね。
うちの研究会に入らない?」
「何の研究会?」
「みなみの森研究会」
この辺りは昔から、森の南端だった為、古くからそう呼ばれているという。
「まだ、研究員は4人しかいないんだけど、それぞれがやりたい研究をやってるの。
時々、研究発表会をやったり、みんなで森に入ったりしてるの。
それぞれが色んな知識を持っていて、みんなで話してるだけで楽しいよ。
あなたも入ってよ!」
そそられる。
「入りたいけど、課外活動は無理かな。
H大の森林研究室にも所属してるし」
「あら、そうなの?
佐々木教授の所ね。
実は、私も所属してるの。
最近は、あまり顔出してないけど」
「そうなの?
私も所属したはいいけど、全然行けてない。
除籍とかにならないか心配」
「大丈夫よ!
幽霊部員はいっぱいいるから。
行きたい時に行けばいいのよ。
それと、研究について相談したい時とか助けてほしい時とか」
「今は忙しくて」
「そうだったわね。
ミュージシャンもやってるんだったわね」
「それに、子供もいるし」
「そうだった?
それは大変ね!
時間が空いた時でいいわ、一度遊びに来るつもりでいらっしゃい!
研究棟の316号室よ」
そう言って、ジャンバーのポケットから名刺を出して、私にくれた。
Dejavu!
佐々木教授もあの時名刺をくれて、私の生き方が変わった。
委ねてみたい気持ちもある。
その時、スマホが振動し、私は時間を見て驚いた。
「ヤバい!
次の授業に遅れちゃう。
じゃあ、またね!」
そう言って走り出した私の背中に、谷口先生が念押しした。
「316号室よ。待ってるわよ」
フェンスから飛び出した所で、健人と出くわした。
煙草を吸いに来ていたに違いない。
「ついに森の中に入っちまったんだ」
「健人、次の講義に遅れるぞ。急げ!」
ーKerlyー
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