Forest〜枝葉のように広がる感情ー2

 そんなある日、いつものようにフェンスに手をかけて、森を覗き込んでいた。

すると、数メートル先で、パキッと枝を踏む音が聞こえた。

帽子を被り蛍光色のジャンバーを着た人影が現れた。


「どうやって入ったの?」


急に声をかけられ、フェンスに手をかけた黒尽くめの私を見て、「うわっ!」と驚くその人。


Dejavu?


森のおじさんこと佐々木教授と初めて出会った時のことが思い浮かぶ。



近寄ってくるその人。

帽子を目深に被っているせいか、性別はわからない。

近付くにつれ、とても日焼けしているのがわかる。


「熊かと思ったよ」


女の人の声だ。


「あら!

あなた、社会人受験の面接に来てた子?」


「どうして知ってるの?」


「私が合格にしたんだもの」


「あの時の面接官の人?」


「そうよ。

そんなところで何やってるの?」


「そっちこそ、どうやって入ったの?」


「そこの角を曲って20メートルも歩けば入口があるよ」


「勝手に入っていいの?」


「大学の敷地内からだから大丈夫よ」


 そして、私をフェンスの出入り口に、反対側から案内してくれる。

フェンスの扉を開け、私は立入禁止だと思っていた場所に足を踏み入れた。

入り口辺りは雑草もあまり生えておらず、木も少なく、歩きやすい。


「何か観察してたの?」


そう言って、私の手に握られていたノートを指差す。


「木の種類とか鳥の種類とか、目に入った物や聴こえてくる鳴き声とか調べてるの」


「そういえば、森の全てが知りたいとか言ってたものね」


「そんな事まで覚えていてくれたの?

なんか嬉しい」


森の中ではお喋りな私。


「ところで、えーっと!

名前教えてくれる?」


「あなた、面接の時はずいぶん猫被ってたのね。

今は、ずっとタメ口なわけね!


私は、生態学Ⅱの准教授の谷口たにぐち 幸子ゆきこ

私の講義は来年かしらね」


どんどん知識を脳細胞に覚え込ませたい。

知識欲に溢れている私。



ーKerlyー



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