Forest〜枝葉のように広がる感情

Forest〜枝葉のように広がる感情ー1

 大学の構内の裏側に神社があり、森を隔てるフェンスがある。

その森は、元々は太古から続く原生林だった。

開発の波にのまれ、小さくなっていった。


でも、この森は途中を何箇所か分断されているとはいえ、私の家の近くの森と元々は繋がっていた。

今や南北の両端だ。


私は、それを誰から聞いたのか忘れてしまったが、この森には思い入れが強い。

時間が許す限り、両端の森を観察している。


大学の裏の森は、手付かずのままで生物も植物も多様だ。

奥の方は、人間の手がほとんど加えられていない。


家の近くの森は、住宅地になるはずだったが、『森を守る会』が結成され市と対立し、森の公園を作ることで今の形になっている。

その際に、遊具を設置すると共に、植樹もしている。

小さな小川を流すために橋も作り、都市計画にも組み込まれた。


ある意味、アーバンフォレストだ。


その計画には、私も所属し始めたH大の森林研究室も関わっていた。



 そして、家の近くの森にも神社があり、大学の裏の神社同様御神木を祀っている。

ある意味、このふたつの御神木のおかげで、この原生林が残ってさらに保護されることになったという。

これも、誰から聞いたのかは忘れてしまったが。


その森の両端で私は、昔はギターの練習をしミュージシャンになり、今は学者を目指して勉強をしている。


半端ない愛着がある。



 天気の良い日のお昼休みは、神社の参道のベンチで素早くランチを取り、フェンスの前でその奥に広がる森を観察する。

目に入る範囲の木や植物の種類を調べ、鳥の鳴き声に耳を傾ける。

それをノートに書き留めたり、スマホで撮影したりする。


時々、このフェンスを乗り越えたい衝動にかられ、フェンスに手をかけてみる。

でも諦めて、ランチを取っていたベンチを振り返る。

すると、そこには、健人a.k.a.貧乏ゆすりが座って煙草を燻らしながら、こっちを見ている。


「お前って、ほんと変わってるな!

見てて飽きないわ」



ーKerlyー




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