ライブ・ラジオ・リンクー11
四宮さんのラジオに俺たちは聴き入っていた。
興奮気味に話す四宮さんの当時の感情に、俺たちも当時の心境が蘇ってきた。
「俺達はデビューが決まって、曲作りやレコーディングやテレビ出演などにも追われていた。
彼等の事だから、『天才高校生バンド』とかって話題になって、すぐデビューしてくると思っていた。
でも、全然彼らの噂すら聞こえてこないのよ。
地元の友人に聞いたら、地元のライブシーンでは有名で、右に出るものはいないって。
その時に、細々とやっていたSNS教えてもらって、俺はそこから時々上がる動画を観ていただけ。
こっちもありがたいことに忙しくなり、音楽で飯食えるようになってきた頃に、アメリカで話題になっている日本人ロックバンドがいるって、テレビやネットニュースに出ていたのよ。
彼等だった。
その時思った。
コイツ等、初めから世界を見据えていたのか。
俺が思うより大きいものを求めていた。
テクニックやライブや曲作りのスキルも、どんどん上がっている。
もうその時には、彼等に羨望と嫉妬しかなかったね」
こんな風に、俺たちの事を評価してくれている人に、まず驚いた。
なんとなく胸の中に、俺たちこれで良かったんだという嬉しさと安心感が現れた。
その後、四宮さんは、一緒に飲んだ時の事も話し始めた。
いつの間にか、呼び捨てだったこと。
3人とも顔が傷だらけだったこと。
飲み方が半端ないこと。
そして、カーリーが実際に会うと、肌が綺麗で可愛いとか。
カーリーはニンマリしている。
「彼等は、音楽やることしか考えてなかったんだって。
食えなくてもバイトもしたこともないんだって。
そんなの憧れじゃない!
そして、とにかく尖っていて、色々伝説あるのよ。
でも、尖りの代償もきっちり払ってるのよ。
認めてもらえるまで苦労もしてるのよ。
精神的に危ない時期もあったみたいなのよ。
仲がめちゃくちゃ良いのよ。
お互い知り尽くしてるって、口に出して言える仲なのよ。
復帰してくれるよねって聞いたら、『俺たち音楽がないと生きていけないんで』っていうのよ。
どうよ?
近いうちにぜったいゲストに来てもらいたい。
その時に、これらの事も聞いてみたいね。
酒がないと喋らないよって言ってたけど、上に交渉してみるわ」
四宮さんのラジオの後、ぐっさんのライブハウスの予約が殺到し、一時予約は休止になった。
ロンドンのオフィスにいるボスから連絡がある。
「急に、日本からテレビやラジオやライブのオファーが来るようになった。
何かやらかしたのか?」
全てを断ってもらった。
活動休止中という理由で。
今の俺たちには、そんな余裕はない。
明日から、また学校や仕事だ。
子供達の事もなおざりにはできない。
ーShowー
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