ライブ・ラジオ・リンクー12

 すのーふれいくの四宮 涼介のラジオで、Scream Of No Nameが盛り上がっていた中、ひとり苦境に立たされていた男がいた。


俺だ。


椿つばき 誠人まこと

33歳。

奴等からは、修平パパと呼ばれている。

最近では、省略されて『シューパ』と英語のアクセントで呼ばれている。


お笑いコンビ『いのきつばき』を、この度解散することになった。

お互い子供が生まれ、相方の猪木にはさらに二人目が生まれるということもあって、親の家業を継ぐことになった。

仕事のほとんど無い今の状況では、留めることもできなかった。


妻の優香ゆうかも、


「そろそろ潮時だ」


と言う。


それでも諦めきれない俺は、先輩芸人のローカル番組のロケをお情けで貰ったりしていた。


コンビでやっていた、深夜というか早朝というかのラジオ番組も、このクールで終了を匂わせられた。



 この日も、ひとりでラジオだ。

深夜というか、人によっては早朝のラジオ番組で、解散の報告をし、思いの丈を愚痴りまくった。


この時間帯だ。

裏番組は、50年続く人気ラジオ番組番組で、人気芸人がやっている。

リアクションも薄いし、リスナーも少ないに違いない。

それでも、解散の報告に3通のメールが来た。



 ただひとり、まだ報告していない奴がいる。

カーリーだ。

今や家族ぐるみバンドぐるみの付き合いだ。



 ネタは俺が作っていた。

破天荒キャラの俺が暴れて、相方が諌める。

そんなネタだったが、カーリーに出会って、俺はそんなネタが作れなくなった。

カーリーとバンドメンバーのレイとショウは、まさに破天荒で、俺の想像の遥か上を行っていたからだ。


 

 初めての出会った頃のカーリー。

黒尽くめで、ひどく痩せ、ベリーショートの髪の毛で、サングラスを掛け、男か女かさえわからず、そしてベビーカーを押している。


その姿が、その頃の俺には、すでに破天荒だった。

そんなカーリーに、俺は好奇心だけで話しかけた。


しかし、毎日のように公園で会うようになってから、俺の中で破天荒の意味が変わった。


それでも、奴等は破天荒だった。



ーShupaー

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