ライブ・ラジオ・リンクー10
「ステージに上がると、女の子がいきなり叫び出したんですよ。
『あああー』って。
みんな振り返りましたね。
男の子のでも女の子のでも、人の声にさえ聴こえなかった。
鳥肌立ちましたよ。
叫び声が途絶えると同時に、キーボードを肘でスライドさせるんですよ。
肘ですよ!
そして体をひねってベースを弾き出すんだけど、マイクスタンドに当たって、マイクスタンドが倒れるわけよ。
それと同時に一斉に演奏が始まる。
爆音ですよ。
その演奏には、バンドマンなら一度は演ってみたいテクニックが詰まってるんですよ。
俺は、頭をぶん殴られた感覚でしたよ。
爆音にかき消されて、何歌ってるのかわからないのよ。
途中、ドラムのシンバルがガシャンって倒れたの。
一緒に飲んだ時に、そのことを聞いたら、
マイクスタンドが倒れたのは、距離を見誤ってぶつかってしまった。
シンバルが倒れたのは、使い込まれたシンバルにヒビが入っていて、スティックがはまってしまった。
それを振り払った勢いで倒れてしまった。
全てがハプニングで、その時に微妙にテンポが狂ってしまった。
やらかしたって思っていたんだって。
だけど、違和感もなにもないわけ、聴いてる方には。
だって、高速で変則的で不協和音満載なんだもの。
そういう曲にしか聴こえないんだもの。
演奏が終わると、シーンってなるわけ。
だって、みんな度肝抜かれてるから。
すると、彼等、コードをブチッて抜いてステージを去って行ったのよ。
なんて奴らなんだ?
なんてパンクなんだって思ったね。
控室に帰ってきても、みんな遠巻きに見ているだけ。
でも、出ていく前とは別人で、やりきった感で堂々と戻ってきた。
大人達が、よしよしって感じで頭をクシャクシャってするわけ。
俺は彼等に近付いて、『君達凄いね』って言って手を出した。
共演者の中で握手を求めてきたのは、俺だけだったんだって。
彼等も『どうも』って言って握手した。
その後で、レコード会社の人らしい人が来て、名刺を渡していた。
それを見て、俺達はさっきまでの自信が消えていった。
でも、その地区予選で、俺達は優勝して本戦に行った。
その本戦で準優勝して、俺達はデビューした。
彼等は地区予選で特別賞だった。
その時、彼等は高1でまだ15歳だった。
その時からずっと彼等が気になっていて、俺はずっと追い掛けていた。
キモいって言われちゃったよ」
ーShowー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます