ライブ・ラジオ・リンク

ライブ・ラジオ・リンクー1

 美由紀を呼び出した数日後、月2回に増やしたぐっさんのライブハウスでのライブの日だった。


小さな箱なので、スタンディングで100人も入ればいいところだ。

ステージとオーディエンスも近い。


ロンドンの時は尖りまくってた俺達だった。

ライブでも無愛想極まりなかった。

ショウの言葉少ないMCと、時折出てくるカーリーの豹変ぶりが、場を盛り上げていた。


ぐっさんのライブハウスでは、もともとオーディエンスも知った顔ばかりだったので、掛け合いも楽しかった。


しかし、相変わらずチケットの予約が日本全国のみならず、外国からも来るようになり、曲数も増え、MCや掛け合いや構成も変わってきた。



 それぞれ子供もいたり、もうひとつの顔もあり、合わせるのも大変だ。


それでも、活動休止中の余りお金にならないライブは、腕が錆びつかないようにする意味でも、気持ちを揃える意味でも、重要だ。




 そんなライブの日だった。

俺の家から、親父から受け継いだワンボックスカーに、いくつかの機材を載せて出発するところだった。


スーツを着た見たことのない男に呼び止められた。


「杉崎 令さんですか?」


俺は、かなり怪訝な顔をしていただろう。


「私、弁護士をしておりますこういうものです」


と言って、名刺を出してきた。



俺とその男の顔を、睨みつけるように見比べるショウとカーリー。


ふたりが気を利かせてなのか、小声で、しかもストリート訛りの英語で話しかけてきた。


「大丈夫なの?」

「何かやらかしたのか?」

「ヤバいことに巻き込まれてるとか?」


俺も英語で返す。

ただしクイーンズイングリッシュで。


「大丈夫だ。

悪いが、先に車で待っててくれないか?」



こちらをチラチラ見ながら、俺から離れていくショウとカーリー。

カーリー!ポケットから手を出せ!

悪いが、しばらく品行方正にしていてくれよ!


ふたりきりになった所で、


「私は、小山 美由紀さんのご主人の弁護士をしております」



出たな!

俺は、薄々気付いていた。



ーRayー


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