新しい匂いー23

「それより、お前の話だ」


美由紀は顔を背ける。


「その後、離婚の話は進んでいるのか?」


「夫側が次から次に戦略を変えてくるから、なかなか先が見えない。

今のままだと、私は不利かもしれない。

でも、まだ決定打は喰らってない」


「子供達は絶対手放すなよ!」


「当たり前でしょう!」



美由紀に、有希の今日の様子を話す。


「有希は、ドラム上手くなったな!」


「杉崎くんがいない時も、副社長と練習場に来て、ドラムを叩かせてもらってる。

練習場に来るみんなにも懐いてる」


「有紗は?」


「練習場よりもキッズスペースの方が好きみたい」


「そうか。よかった」


「俺は、今まで子供達とも距離をおいてくれと言われて、そうしてきた。

でも、それは正解なのか?」


「杉崎くんが私の男だと思われてる以上は、こうするしかないのよ。

それでも、どうにかやり過ごしてる位にしかなってないかもしれないけど。

本当は、ここを辞めるのが手っ取り早いのかもしれない。

でも、そうなると経済面が問われることになるし」


「俺がいくらでも証言してやるぞ。

俺達は家族だ。

いいな?」


美由紀が笑いながら、


「何言ってるの?

刑事事件じゃないんだから。

でも、ありがとう」


「俺が言いたいのは、子ども達のことだ。

離婚調停を上手く進めたいが為に、子供達に寂しい思いをさせていいのか?」


目を伏せる美由紀。


「俺は、お前の子供達に好かれている。

少なくとも、有希にはな。

俺が距離を取ると、アイツ等は寂しい思いをしてるんじゃないか?

有希は、自分が嫌われて、俺が遠ざかったと思って自分を責めていた。


そこで提案だ!

有希にドラムを本格的に教えてやる。

有紗はよくピアノを触っている。

有紗には、ピアノを教えてやる。


これでどうだ」


そう言って、俺は指を一本立てる。


「ひと月一万円?」


「いや!一回100円だ」



ーRayー


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