新しい匂いー11

 俺は、この人懐こい子犬のような小林こばやし そらを質問攻めにしていた。


「僕は、4人兄弟の末っ子で、上は全員お姉ちゃんです。

脳性麻痺なのは3番目のお姉ちゃんです。

僕は、生まれた時から障害者を知ってるので、それが普通です。

1番上と2番目のお姉ちゃんと一緒に、時には3番目のお姉ちゃんの面倒もみてきました。


3番目のお姉ちゃんは、少し知的障害もあり、はっきり喋ることもできず姉弟の僕達ですらわからなかった時もありました。

でも、いつも一緒で仲良しの姉弟でした。

両親も明るく、分け隔てなく僕達を育ててくれました。


でも、それは突然やってきました」


俺は胸が締め付けられた。

涙すら出そうだ。


「3番目のお姉ちゃんが18歳になった時、家を出て自立したい、いつまでも家族に面倒見てもらうのは嫌だって言い出したんです」


「おい!紛らわしい言い方すんなよ」


俺が空を睨み付けると、空は笑いながらこう言った。


「だって、翔さん!

やっと僕に感心持ってくれて嬉しかったんだもの」


お前は、俺に気があるのか?


「それで、お姉さんは今どうしてる?」


「少人数のシェアハウスで、仲間もできて、楽しいみたいですよ。

自分を生きてる感じがするって言ってました」


「そうか」


「翔さん、どうしてそんなに聞いてくるんですか?」


「息子の一人が脳性麻痺だ」


「えー!

翔さん、お子さんいるんですか?」


空のでかい声に、教室内の数人が振り返った。

俺は、また空を睨みつける。



「息子さん、今何歳ですか?」


「2歳の双子だよ」


「障害のある息子さんの為に、この学校に入ったんですか?」


「そうだな。

何かの取っ掛かりになるかと思って。

俺は、空と違って、まだ何もわからない。

障害の事も、俺に何が出来るかも」


「息子さん達をそれぞれ見守るしかないですよ。

僕も、3番目のお姉ちゃんに関しては、そういう気持ちですよ」


「空、お前って大人だな!」


空は、それからというもの、さらに懐いてきた。

俺も空の話は参考になる。

一緒にランチをし、お喋りをするようになった。



ーShowー


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