新しい匂いー9

 カーリーの入学式から遅れること3日、俺が通うことになった専門学校も始まった。

理学療法士のクラスは40人定員だったはずだ。

蓋を開いたら、33人しかいない。

定員割れってやつか?


 それでも、俺は一歩踏み出した。


ミュージシャンであることも諦めかけ、何をしていいのかも分からず、毎日双子の子供達の成長や障害に翻弄され、親達に支えられながら、どうにか生きてきた。


これが俺の進む道かまだわからない。

でも、進み始めた。



 同じクラスのほとんどは明らかに10代のようだ。

中には少し年上かなと思われる人も数人いる。


カーリーの大学と違って、オリエンテーションは1日で終了し、翌日から授業や実習が始まる。


ランチもまたカーリーの大学とは違って、教室かテーブルのあるフリースペースで食べる。

学食なんてない。

教室に、様々な食べ物の匂いが充満する。


ある日のランチタイム、コンビニのおにぎりを食べながら教科書を読んでいたら、ある男の子が声をかけて来た。


「社会人からの方ですよね?」


俺は無言で顔だけ上げた。

その時の俺の目つきが悪かったのか、その男の子は一瞬引いた。


「そうかなぁ」


「実は僕もなんですよ」


その男の子は、凄く若く見えいまどきの子だ。

俺が明らかに年上で、この教室では浮いているとみて話しかけてきたに違いない。



ーShowー




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