新しい匂いー8

 果穂ちゃんが言っていた。


「中学校高校は、心から楽しいとは思えなかったけど、大学はそれなりに楽しかったよ」


今まさに、私はそれを体感している。

学校なんて床と机の模様しか覚えていない私が、それなりに楽しんでいる。


広いキャンパスを探索してお気に入りの場所を見つけたり、

新しい知識にワクワクしたり、

お友達がいて一緒にランチしたり。


少し浮かれていた。

ルーやレイちゃんとショウくんに、


「もう、お友達ができたもん!」


と、自慢したりしていた。



 でも、私の有頂天は長くは続かなかった。

大学が始まって2週間程経ったある日、1講目終わりの休憩時間、幼稚園から電話が入った。


「ケイトちゃんが熱を出しました。

お迎えお願いします」


マジで!

朝出かける時は何でもなかったのに。


とりあえず、同じ学部の達也に、


「急用ができたので帰ります」


とだけ伝えた。


「何かあったのか?大丈夫か?」

 

そう言って心配してくれる達也。

別に、子供がいることを隠しているわけではない。

説明が長くなりそうなので、それだけ告げて大学を後にした。


まっすぐケイトの幼稚園に迎えに行き、行きつけの小児科の午後の予約を取る。


ウイルス性の風邪だ。

ケイトは体温も39度近くまで上がり、ぐったりしている。

小児科の帰りに、シオンを保育園から拾う。


3日程熱は続き、そのまま週末になってしまった。

その後3日間講義には出られたが、今度はシオンが熱を出し、また欠席だ。


この調子で、私卒業できるのかな?

でも、久しぶりに子供達にゆったり接することができる。


子供達が最優先だもの。

留年は覚悟だ。



ーKerlyー






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