新しい匂いー3

 4月になり、1日からシオンは保育園の慣らし保育が始まった。

ケイトの通う幼稚園と同系列の保育園に入ることができた。


シオンは生後6ヶ月を過ぎ、コロコロ転がったりハイハイしたり、目が離せなくなった。

でも、ケイト同様、たくさんの人に親子共々面倒を見てもらっているせいか、人見知りは余りない。

どちらかというと、のんびりおっとりタイプみたい。


保育園で保育士さんに預ける時もキョトンとした顔をして連れて行かれる。

こっちの方が、毎回泣いてしまう。



 そして、シオンが保育園の間、私とケイトは久しぶりに2人きりで過ごす。

一緒に買い物に行ったり、公園で遊んだり。

ケイトも嬉しそうだ。



 4月生まれのケイトは、幼稚園の3歳児クラスの慣らし保育が始まる。

シオンが終日保育になると同時に、ケイトも幼稚園に通い出した。

ケイトは、一番のお姉さんで、慣らし保育の時はひとりきりだった。

数日後、もうひとり男の子が来た。


3歳にしてしっかり者で姉御肌のケイトは、その男の子の面倒までみているそうだ。


別れ際にしくしく泣く私にケイトは、


「Mummy!Don't cry!」


と涙を拭いてくれる。

担当の保育士さんが、


「どっちがママかわからないわね!」


と言う。



 ふたりをそれぞれお迎えに行く。

その度に泣くパパみたいなママを、保育士さん達は最初引いていた。

そのうち慣れてきたのか、


「ママしっかりー!」

「ママの方が心配だわ!」


とか言って受け入れてくれるようになった。



 子供達の頭の匂いを嗅ぐのが好きな私。

落ち着くし、生きる気力が沸く。

子供達の生気を少し分けてもらっている感じだ。


朝は、何とも言えない赤ちゃんの匂いがしていたのに、迎えに行って嗅いだ匂いは、今までとは違う匂い。


保育園や幼稚園の匂いだ。

新しい場所で、

新しい環境で、

この子達が頑張って過ごしている匂いだ。

新しい経験をしている匂いだ。



ーKerlyー



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