新しい匂い

新しい匂いー1

 年明け早々、練習場と家が完成した。

2月には、俺は新居に引っ越した。


木の匂いがする。

新しい匂いだ。


 親父を亡くした後ママを一人にしたくない想いもあったが、28歳にもなって実家暮らしもないだろう。

といったところで、同じ敷地内だ。

運送業を営んでいるので、常に大型トラックが何台も停まっていて敷地も広いが、歩けば一分だ。


それでも、ママは寂しがる。


「どうせこんなに近くにいるのなら、同じ家でもいいでしょう?

レイちゃんまでいなくなったら、ママ寂しくなるじゃない」


といってさめざめと泣く。


「会社でも毎日のように会うし、だいたい料理なんてできないんだから飯も食いに行くし」


すると、一緒にいたカーリーがこう言う。


「女の子を連れ込めないのが一番の理由でしょう?」


「やっぱりね。

でも、よそのお嬢様に余り手を出しちゃダメよ」


ママはいつもこう言う。



 今日は、なぜカーリーが来ているかと言うと、

レコーディングの機材の使い勝手を検証する為だ。

後で、ショウも合流する。



 新しいスタジオハウスは、外階段を数段上がって重厚な玄関を開けると、目の前に練習場がある。

そして、真正面に、親父が使っていたドラムが見える。

この配置は、前の練習場と同じだ。

でも、防音を強化するため、防音壁と防音ガラスで囲ってある。


前の練習場に貼ってあった俺たちのポスターや写真、そして、親父の写真や手紙もそのままだ。


そして、1階には、リビングルームと小さなキッチンとトイレとシャワールームもある。

アンプラグドであれば練習もできる。


その一角にキッズスペースも作った。

カーリーとショウの為だ。

ホワンの大学の学生や保育士の資格を持った主婦に声をかけ、ベビーシッター付きだ。

感謝しろよ!


2階には、俺の居住スペース。

2LDKの質素な物だ。


そして、半地下にレコーディングスタジオがある。



ーRayー




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