美由紀の事情ー8

「巻き込みたくないのよ。

一度警察沙汰になったの。

だから、ひとりで立ち向かうって決めたの」


美由紀は少し興奮気味だ。


「だけど、あの日有希は助けを求めてきたんだぞ」


その言葉を聞いた途端、美由紀は泣き出した。

俺は、そんな美由紀を抱きしめた。



「お昼休みは短いから、かいつまんで話すわね」


 しばらくして、美由紀は俺の腕を振り解き、いつもの様子を装い話し始めた。



「有希が生まれた頃、夫は友人と会社を立ち上げたんだけど、その友人の裏切りとか顧客が離れて行ったりで、有紗が生まれた頃には、結構厳しい状態になったの。


その頃から、人が変わったようになって、私だけじゃなくて、子供にまで当たるようになった。


それまで、誰よりも元気だった有希が、大人の顔色伺うような大人しい子になっちゃって、有紗も不安や恐怖からなのか、よく泣く子だった。


ある日喧嘩になって、「出て行け」って言われた。

待ってましたとばかりに家を出た。


その時働いていた前の会社の社長もすごく良くしてくれた。

でも、ある日会社の前で待ち伏せされて、腕を掴まれていた私を、社長が助けてくれた。

なのに、誰かが警察を呼んだらしくて、夫は社長から暴力を振るわれたと主張し、社長は事情を聞かれた。


私は、これ以上迷惑かけられないからと退職願を出した。

社長には気にするなと止められたけれど、私の決意を汲み取ってくれて、街の反対側のここを紹介してくれた。


その頃から、離婚届を夫の家のポストに、何度か入れた。

会社とか家は知られないようにしていたんだけど、パパさんが癌で痩せ細りだした頃、突然会社の前に現れたて口論になったの。


パパさんは、そこのところ上手くやってくれたけど、ちゃんと事情を話せと言われた。


そういうこと。

大丈夫!私がなんとかするから」



ーRayー







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る