欲望なの?愛なの?ー17

 シャルル・ド・ゴール空港に着く。

その足で、映画作成会社の社長に会いに行く。


今の社長は、父の元再婚相手で、俺たち兄弟の継母でもあった人だ。


「あなたは、まだまだ甘いわね」

「私だから許されたのよ」

「これからは、そうはいかないわよ」


と怒られた。


パリのアパルトマンに着いたのは、11時近かった。


ソファに座って、少し気を落ち着けてから、カーリーに電話した。


「そっちは、朝やな?」


聞こえてくる、泣きじゃくる声。

取り繕うように話すしかない俺。



しばらくすると、ぶーんと鼻をかむ音。


そして、小さな声で


「I miss you」


と聞こえてきた。

俺の頬にも涙がすーっと流れた。


「もう、セックスなんていらないから」


「あなたと一緒に、また出かけたい」

「あなたと一緒に、また食事の支度をしたい」

「あなたと一緒に、またケイトと遊びたい」

「あなたと一緒に、また目覚めたい」


「でも、私にはできない。どうすればいい?」


そして、また泣きじゃくる声。


「せやな!

これから考えていこうな」


「毎日電話するからな!」


電話を切る。



オスカーが、そんな俺を見て、


「あなたが、涙を流すような恋ですか!」


と、皮肉を言って、出て行った。







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