欲望なの?愛なの?ー12

 尋常じゃない形相で練習場に戻ってきた私に、2人は、「どうした?」と近づいてくる。


私は、泣いてしまった。

何も話さず、ただ泣きじゃくった。



しばらくして、ルーが練習場に入ってきた。


「話がしたい!」


そう言うルーに、私は、近くにあった楽譜や本を投げつけ、外に出た。


ルーは、レイちゃんやショウくんに、事情を説明しているようだ。


「カーリー!中に入れ!」

「ちゃんと話せ!」

「今日は、ケイトはうちで預かるから」


私は、練習場に戻される。 


「感情的になっているうちは、俺たちがいてやる」


そう言って、4人で、少し離れて、椅子に座る。



 ルーが話し始める。


もう10日も前に、映画作成会社の社長から、承諾の返事が来ていたこと。


少し待ってほしいと頼んでいたこと。

この生活を手放したくなかったからだ。


来週から打ち合わせや準備をしたいと、社長からメールが来ていたのを無視していたこと。


痺れを切らした社長が、ルーのお父さんに頼んで、オスカーを送ってきたこと。



私、忘れていたの?

わかっていたことじゃない。


そんな自分にも腹が立っていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る