きざしー5

 ぐっさんのお疲れ様会は、哲治さんの居酒屋『一哲』で貸し切りで行われた。


 元々哲治さんのお父さんのお店で、お父さんが亡くなった後、哲治さんと奥さんとお母さんの3人で切り盛りしている。

建物は古いが、宴会ができるお座敷もあり、地元のお客さんで賑わっている。

親父も常連だった。


哲治さんは、いつもライブ優先で家族から呆れられている。


 

 久しぶりに会う親父のライブ仲間達も大勢来ていて、俺たちは、ロンドンの話を聞かせろと大変だった。

いまだに、消化できない出来事も多く、


「いつか話せるようになったら」


という答えにも、理解をしてくれる人達ばかりだ。


 

 ぐっさんは、食品会社の営業マンだった。

やはりライブ優先で、バツイチになった。

でも、息子さんは、ぐっさんの影響で、サラリーマンしながらバンドもやっている。


 そんなぐっさんが、還暦前に仕事を辞めたのには理由があった。


親父達やライブ仲間がお世話になっていたライブハウスが、閉店することになった。

俺たちも、10代の頃よく出ていた。


ぐっさんは、そのライブハウスを買い取ったのだ。


親父達のライブ仲間には、いろんな仕事をしている人がいて、ライブハウスの改装も、かなり格安で済んだらしい。

 

「年明け早々に、開店祝いライブをやるからな。

みんな来てくれよ!」



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