俺たちのもうひとつ

俺たちのもうひとつー1

 練習場でスイッチが入った俺は、半年ぶりにドラムを叩いてみた。


どうして半年も叩かなかったんだろう。


それは、きっとドン底で終わったからだ。

もう終わりだと思ったこともある。

音のない世界でふわふわと生きていた。


でも、ドラムを叩いていれば、過去のドン底や先の不安も考えなくて済む。


だが、

現実が待っていた。



肩慣らし程度なら問題はない。


しかし、右手の痺れが、思っていた以上に違和感がある。

叩き方を変える?

徐々に慣れていくしかないのか。


スイッチが入ったとてだ。



でも、不思議と焦りはなかった。

ドラムを叩ける幸せだけ味わっている。


あの頃と違って、3人で集まることは難しい。

それぞれのもうひとつがあるからだ。

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