きざしー4

 ある日曜日の午後、哲治さんから呼び出しがかかった。

ぐっさんが、長く勤めていた会社を早期退職したそうだ。

お疲れ様会を、哲治さんの居酒屋でやるという。


 その前にやりたい事があるから、付き合えと言われ、俺たち3人は呼ばれた。


 親父が亡くなってから、ぐっさんや哲治さんすら入ることができなくて、ずっと閉め切ったままになっていた練習場。


「あいつは、ここにいないわけがない」


「ここに、写真と最後の手紙のコピーをフレームに入れた物を飾りたい」


「お前らも付き合え」


ぐっさんが鍵を開ける。

哲治さんと俺たちも恐る恐る続く。


埃っぽいが、あの頃のままだ。

いろんな思いが駆け巡り、センチメンタルになる。


ステージの後ろの壁に、俺たちの3枚目のアルバムのポスターが貼ってあった。


「まずは掃除だな」

「お前らも手伝え」


 ドラムに積もった埃を払っていたら、シンバルを鳴らしてしまった。


俺の体の中で、カチッとスイッチが入る音がした。


みんなが振り返っていた。


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