帰国〜ショウー6

 「そろそろ子供達の名前を決めないと!

いつまで、A君B君って呼ばせるの?」


日本での葬儀から戻った日、ママから言われた。

もう1週間も、俺はこの子達に名前すらつけていなかった。


妊娠中の真澄が、こう言っていた。


「あなたの子なら、おとうたでしょう」


その頃は、なんだか安易だなと感じて嫌だった。

せめて、抱くことのできなかった真澄に、名付け親の権利はあげたかった。


先に取り出された兄が、音。

後から取り出された弟は、唄。


 双子たちは2人とも、呼吸の止まった状態の真澄から取り出された。


音は、すぐに呼吸を始めたが、

唄は、蘇生に時間がかかったそうだ。

2人とも障害がないかを検査し観察する必要があるそうだ。


音は1500グラムだが、

唄は1200グラム以下でさらに小さい。

一時は、命も危ぶまれていた。


俺は、そんな2人を置いて、日本に帰った。

それでよかったのか。

何もかもが、自分の間違いに思えた。



 小さな赤い生物だった2人に触れてもいい許可が出たのは、日本から帰って来た翌日。


小さな頭を撫でて、小さな小さな手を触っていたら握り返して来た。

愛おしくて、涙が出た。

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