帰国〜果穂ー9

「では」


そう言って、いくつかのスーツケースとベビーカーを手に去ろうとした時、姉が振り返り、レイに向かって手を伸ばした。

レイが近付き、姉を抱き寄せた。

小さな声で、英語で何やら話している。


私が聞き取れたのは、

「これから、どうなるの?」

「わからない!近くにいるだろ、俺達は」


そして、唇に軽くキスをして、また抱き合い、意を決したようにお互い振り返り、反対方向に歩き出した。

姉の目から、大粒の涙がこぼれた。



 哲治さんの車には、一番後ろの席にベビーシートも設置されていた。

そこに、姉親子が乗り、私は八木さんと2番目の席、黒川さんは助手席に乗った。

姉は、色々話しかけてくるが、話は弾まない。

そのうちに、ケイトがぐずり出して、完全に会話が途切れてしまった。


 その様子をみてか、八木さんが、


「時間遅いですが、ホテルに着いたら、少しお付き合い願えますか?」


と聞いてきた。


 姉は、ぐずり出したケイトを英語であやしている。

おもちゃを与えたり、ジュースを飲ませたり悪戦苦闘している。


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