カクヨムでエッセイを「書く」と「読まれる」か?
タイトル通りの疑問。「カクヨムでエッセイを『書く』と『読まれる』か?」
すこし前なら、わたしはこれに「ノー」と答えていた。
というのも、わたしはもともとここ、カクヨムで「日々」というエッセイを公開していた(https://kakuyomu.jp/works/16816700426056586129)。
いまは多くを非公開にしているが、「人生を変えなかった無職時代の旅」「結婚生活のちいさな喜び」「『王様ランキング』の作者が描いた自伝エッセイの感想」など、その内容は雑多だった。小説とあわせて読んでくださる方はいらっしゃるものの、そんなに「読まれた」実感はない。
「カクヨムには、みんな小説を読みに来ているのだから、日常ベースのエッセイは読まれないのでは」というのがわたしの感触だった。
ただし、「注目の作品」には、創作論はよく上がってくる。「どう書く」「どうすれば読まれる」はカクヨムユーザーの共通の興味なので、需要が高いのだろう。
ところで、わたしがこの前参加した文学フリマ東京37では、エッセイブースが急増した。年々、エッセイでの出店は増えているものの、前回が169ブース、今回が262ブースなので約100も増加したこととなる。勢いがある短歌・俳句ジャンルでも、前回101で今回が143。小説でもともと数が多いエンタメは前回136で今回152。エッセイブースの増加は群を抜いている。
そんなレッドオーシャンなエッセイジャンルに、わたしは「丸毛鈴の結婚と生活」というサークル名で、同名のエッセイ本を持って参加した。内容は結婚生活や季節のよろこび、動物への想いや自らの不妊についてなど、「結婚と生活」よろず、といった内容。参加前はレッドオーシャンに沈むのではないかと心配したが、幸い、事前のWebカタログで「気になる」(「いいね」のようなチェック機能)はそれなりの数をいただき、当日も「エッセイでの出店者も多いが、求めに来ている人も多いので、ついでに見てもらえる」といったプラスの効果を感じた。
終了後、参加者の感想を見ていると、「エッセイはやはり雑記的にいろいろ入っているものは弱い印象ですね。テーマがはっきりしているものが強い感じ」と書いている人がいた。ドキッとした。わたしのエッセイ集は「雑記」に近いからだ。
振り返ってみると、開催前にXでチェックし合い、会場でも本を購入し合ったサークルさんは、「履歴書に書けない履歴を書いた本」「事実婚について」「子どもを持たないという話」など、どれもテーマ性がはっきりしていた。そして、その多くの方の同人誌が完売、または予想以上に求められたと聞いた。
う~ん。じゃあ、なぜ、そこまでテーマ性が明確ではない自分の本に興味を持ってもらえたのだろう。
考えた結果の仮説はこうだ。「雑記でいながら、ワンテーマだと思ってもらえたから」。
文学フリマの告知にあたり、わたしはエッセイ本のサンプルを何本かXにアップした。もっとも反応がよかったのは、「『産む性』から『わたし』をべりっとはがせたら」という不妊まわりのもの(https://kakuyomu.jp/works/16816700426056586129/episodes/16817330666621485051)。次は、夫の横顔を見ているときの記憶の連鎖をエモーショナルに描いた「記憶の火花」だ。
「不妊まわり」を書いたエッセイが収録されていて、『丸毛鈴の結婚と生活』というタイトルがついている。それすなわち、「現代の結婚生活について書いたもの」という「ワンテーマ」として受け取ってもらえたのかもしれない。そして、それは嘘ではない。
だから、いろいろなエッセイは入っているけれど、それなりの手応えや引きを感じられたのではないか。
ここから、「カクヨムのエッセイ読まれない問題」に戻る。その文学フリマのあれこれで思い出したのが、カクヨムでの注目の作品に「わたし以外の作者さんの」「創作論以外のエッセイ」が上っているのはよく目にすること。それらはたいてい、「ダイエット」「農業」「何か特殊な体験や職業について」など、ひとつのテーマ性があった。
わたしのエッセイになかなか目にとめてもらえないのは、「日々」という曖昧過ぎるタイトルや、そのタイトル通りの雑多すぎる内容のためではないか。
実際、わたしがカクヨムに載せているまさにこの「書く」に特化したエッセイは、「魔法のような上達法」などは一切載せていないにもかかわらず、新たな読者の方にも読んでいただいている。これはまさに、「ワンテーマ」に絞っているからだろう。
「カクヨム」でも「文学フリマ」でも、やはり「ワンテーマ」が強いのではないか。
そう結論づけたいまのわたしは、冒頭の問いにこう答える。
「カクヨムで、エッセイは読まれないことは、ない。ワンテーマであれば」。
と書きつつ、わたしは文学フリマとカクヨム掲載エッセイ(雑記)、または雑記とワンテーマ特化型エッセイの意外な相乗効果も感じてもいる。
Xの文学フリマ告知から近況ノートに飛び、「日々」を回遊して読んでくださった方や、「書く」エッセイから「日々」を読んでくださった方もいたのだ。
また、「はじめまして」の方に、Xに貼ってあるカクヨムリンクをクリックしてもらうのは至難の業だと思っていたが――。「文学フリマで興味あるサークルを探している人が」「興味惹かれるテーマ、タイトルを見た場合」は、「カクヨムのリンクであってもクリックしてくれる」とわかった。
これについては、「何言ってんの」という向きもあろう。解説すると、わたしの体感的に、「SNSに貼られたリンクは、基本的にかなりクリックされにくい」というものがある。例外的にその心理的ハードルが低いのはnoteだ。ログインを促す画面が出ず、広告も表示されず、テキストだけを読めることで培ったブランドイメージが効いているのだと思う。
ともかく、「文学フリマ」といったイベントのトピック性が、新たな読者と作品をつなげてくれることもある。
いろんな活動がゆる~くつながって、自由に書いたものを読んでもらえるようになる(微増であっても)。
そういった体験をした後では、「エッセイは、ワンテーマに絞って書くと読まれるよ!」と結ぶのは、あまりにも味気ない。そこで、「カクヨム」でエッセイを「自由に」書き、「それなりに」読まれる方法をわたしなりに考えてみた。
自由度が低いものだと、
「書きたいことを書き出してみて、4~5話ぐらい書けそうなテーマがあるなら、それについて絞って書く」
が確実性が高いけれど、それは置いておいて……。
・雑多でもいいのでエッセイを自由に書き、「できるだけテーマ性が感じられるタイトルを工夫してつける」。
→ひとりの人間が書いているのだから、何かしらの傾向があるはず。たとえば「●●の徒然日記」を、「コミュ障のわたしのサバイバル日記」のように、属性を乗せたタイトルにすると、ビビッドになるかもしれない。ただし、「徒然日記」には「徒然日記」の需要もあるので、どちらが良い、悪いではないことを付け加えておく。
日記は日記で! 需要が! ある(実は人の公開日記を読むのも好きなのです)!
また、ゆるいタイトルだからこそ綴っていけることもある。「何々しなきゃいけない」ということはない。
・ストックがたくさんあるなら、ワンテーマに絞って掲載する。
→これは、わたしが「日々」に載せているエッセイの多くが、ブログからの転載だから。せっかく転載するなら、より読まれる方法を考えてもよいのだな、と。
・雑多でもいいのでエッセイを自由に書き、告知をきちんと行ったうえで、活動量を増やす。
→「活動」は、ほかのワンテーマのエッセイを書く、文学フリマなどイベントごとに出てみるなど。ひょっとするとカクヨムに載せているほかの小説をひっさげて自主企画に参加する、Xなどで行われているハッシュタグのSS企画に参加する、などでの広がりが、まわりまわってエッセイに帰ってくるかもしれない。気長な話だが、「自由に書く」気楽さにもっともフィットする。
多くの書き手は、「不特定多数にとにかく読まれる」バズを願っているわけではないのではないか、と思うことがある。
「PVを求める心、とにかく読まれたい心」と、「誰か届くべき人に、届いてほしい」「そのためにもたくさんの人に読まれてほしい」が共存していることもあると思う。というかわたしはそうだ。そのせいだろうか。「誰かに届けられた」という実感は、PV換算できない喜びがある。自分の工夫や行動の結果、そういったことが起きたときはなおのことだ。そういう喜びがあると、心が支えられる。「もっと書こう」「今度はこうやって告知してみようかな」と前向きになることができる。前向きになると、物事が好転していく。万のバズはなくたって、「楽しく手ごたえを感じながら、マイペースに書ける」ことだって十分得がたい。
「読まれるために、ああしろこうしろ」「読まれたいと言いながら、工夫がないものはダメだ」といった強めの意見もある。けれど、人には向き不向きがある。タイミングもある。自由にゆるく綴るのも、大切な喜びのひとつだ。そこから生まれるものもある。それでも「もうちょっと読まれたいなあ」「新たな読者と出会いたいなあ」と思うときもある。それはぜんぜん矛盾していなくて、当たり前のことだと、わたしは思う。
そう思われたとき、このゆる~い対策エッセイを思い出していただけたら、とてもうれしい。
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