16.彼女は『彼女』であって彼女ではない
翌朝、俺はミレイアとリナを伴って準公爵王都邸へと向かった。
昨日のうちに、腕輪状の鍵を作っておいた。
大きさは、成長と共に変化できるように【自動調整】を刻み込んである。
デザイン自体は、ミレイアにお願いした。
俺には、こう言ったアクセサリーの良し悪しは分からないから。
おかげで、2人して少し寝不足だ。
30人分の腕輪と執事服、メイド服の仕立てもしていたから。
服にも特殊な加工を織り込んだ。
普通に鎧よりも頑丈かもしれない。
腕輪の意匠や機能を利用しようとされるかもしれないので安全を考慮している。
誘拐などがある場合も考慮して、追跡が出来る仕掛けも付けてある。
俺達は、リサの運転で馬車へ向かっている。
といっても、公爵王都邸から準公爵王都邸までは目と鼻の先なのだけど。
ちなみに、この馬車もここ最近俺とミレイアで作った物である。
揺れが限りなく少なく、快適な空間だ。
ミレイアは、俺に寄り添うように座っている。
彼女は、とてもニコニコと笑みを浮かべている。
「楽しそうだね」
「はい、前では新しい使用人は少なかったのでワクワクします」
確かに、前世では皆年老いていたしリサ以外で若い子達は10人にも満たないほどしかいなかった。
こんなにも多くの使用人を迎えるのは確かに始めてだ。
それに、準公爵邸を新しく立ち上げるのだから。
「まあ、半数が歳近いからね。
といっても、今の年齢だけど」
「洗礼の儀を受けるくらいの年齢ですね」
育成と言うよりも教育に近いかもしれない。
確か、上は8歳で下が5歳だったはずだ。
馬車はそのまま準公爵王都邸の敷地へと入っていく。
馬車にも門を潜れる様に鍵を付与してある。
やがて、馬車が停まりしばらくするとドアが開いた。
「旦那様、奥様。到着いたしました」
俺達は、馬車を下りる。
馬車を下りると、目の前に庭園が見えた。
随分立派な庭園が出来上がっている。
「あれ?ミレイア、庭園作ったの?」
「はい、どうですか?」
「凄いよ、流石ミレイアだね」
俺は、彼女の頭を撫でる。
「レイン様に撫でられるの好きです」
「ならよかったよ、さあ行こうか」
俺は、ミレイアと手を繋ぐ。
彼女の薬指には、新しく作った指輪が嵌められている。
俺の薬指に嵌めている物と同じデザインの物だ。
これには、邸の鍵と【毒】関連や色々な物を詰め込んである。
たぶん、今までで最大の効果が乗っているだろう。
遠くにいても話をすることもできるようにしてある。
「どうやら、来たようです」
リサの声に、入口の門戸を見る。
そこには、ドルオールが30人の奴隷を護衛と一緒に連れてきていた。
奴隷たちの契約は昨日の内に済ませている。
今日は、受け取るだけだ。
俺は、ドルオールにと近づく。
「レイン様、ご注文の奴隷をお連れしました」
「ご苦労」
「またのご利用お待ちしております」
そう言うと、ドルオールは護衛を連れて帰って行った。
俺は、奴隷たちに向き直る。
「やあ、昨日振りだね。
私は、この邸の主でレイン・フォン・クロフォード準公爵だ。
これからは、君達の主になる。よろしく頼む」
俺がそう言うと、奴隷たちは驚いていた。
まあ、こんな子供が貴族当主とは思わないよな。
「リサ、皆に腕輪を。
腕輪をしたら邸に入り着替えをしよう」
俺は、リサに腕輪をしてもらえるように頼む。
そして、腕輪をした子から敷地へと入っていく。
子供たちは、馬車の傍に居るミレイアの元に集まっていく。
「お姫様?」「可愛い」と少女達が彼女に声を掛けている。
俺も、近づいていく。
「彼女は、君達の主人になるミレイア・フォン・クロフォード準公爵夫人だ」
「みんな、よろしくね」
俺達は、その後邸の中へと入っていく。
俺とミレイアは、食堂へ向かう。
リサは、奴隷たちを連れて使用人専用の宿舎へと向かった。
俺達は、食堂でポーチの中に入れてきた淹れ立ての紅茶やケーキなどを出して一息ついた。
「レイン様、皆可愛いですね」
「初々しいよね・・・まあ、俺達も見た目は同じなんだが、精神は随分となぁ・・・」
精神は、20歳くらいは越えている気がする。
まあ、大戦時代に重ねた年はあるのかはわからない。
ミレイアがいなくなって俺の中で何かが壊れたから。
「レイン様は、年上には思えませんね」
「君がいなかったからな」
「レイン様は、あの日なままなんですね。よかった。
これからは、一緒に歳を取っていきましょうね」
「ああ、もちろんだよ」
俺達は、それからしばらくみんなを待ちながらゆっくりと過ごした。
◇
少しだけ時間が経って食堂が賑やかになった。
使用人たちが、リナと共に戻って来たのだ。
彼ら、彼女らはそれぞれに執事服・メイド服を纏っていた。
改めて【鑑定】をしていく。
最近【鑑定】は、【鑑定★★★★☆】になったことで人の適性を見ることが出来るようになった。
俺と同じように、ミレイアも【鑑定】をしていく。
そして、俺達はリナに言って区分けしていく。
大きく分けて、【料理】【掃除】【戦闘】とグループを作っていく。
言ったのだが、ルーセリアは【料理】の適性があった為、料理のグループに振り分けられた。
やはり、彼女は俺の知っている『紅のルーセリア《彼女》』ではないようだ。
いや、正確には前世の彼女は奴隷の主を殺したことで『紅のルーセリア』になるのだろう。
「リナ、それぞれ分担していこう。
俺が、【戦闘】。ミレイアは【料理】。リナは【清掃】を担当しようか」
「分かりました。・・・奥様は、料理が出来たんですね」
「ええ、結構得意なんですよ。ね、レイン様」
「ああ、ミレイアの料理は絶品だよ」
前世では、ミレイアの料理に胃袋を掴まれていたからな。
「リナ、あとで風呂の準備も頼むよ」
「畏まりました」
30人の内訳としては、それぞれ10人ずつといったとこだろうか。
俺は、その日戦闘グループの戦闘訓練をした。
・・・やりすぎた。
庭・・・庭園とは違う庭では戦闘グループの10人が倒れていた。
心象武器は、様々だったが俺はそれらに全て対応してしまった。
銃に比べれば弓は遅いし、回避もしやすかった。
というか、俺は『アルマディオン』を使わずに適当に作った木刀だったのだが。
【身体強化】も使っていない。
じっくり育てていこう。
しばらくは、邸から出ないか出る場合は複数人で纏まって動くように言っておこう。
この邸の敷地内なら侵入者は今のとこ現れることはないから。
------------------------------
レインしばらく休載します。
次回は、少しだけ時間が経過して入学式になります。
レイン -君に再び出会い、共に歩む為に- 天風 繋 @amkze
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。レイン -君に再び出会い、共に歩む為に-の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます