7.俺は、抗い続ける。
昨日午後全てを使って分かったことがある。
父上は、いまも毒を盛られていることを。
そして、その毒を仕込んでいる犯人も。
まず、【探知】で【毒】を探した。
父上の執務室にあるペンから検出された。
その毒を【鑑定】すると、【身体】【構造】から得た知識を基に肝機能障害を起こしうる物だとわかった。
【毒】の経路を【連鎖】【関連】していくことで犯人が浮き彫りになった。
問題は、これらをどう父上に明かすかだ。
犯人は、3人の使用人。
どちらも旧国王派の人間だった。
まだ、父上が王弟として王宮で過ごす頃にあった派閥の一つで現国王を推す貴族派閥である。
当時は、旧王弟派と中立派が存在していた。
未だに、父上の事をよく思っていない物から暗殺を企てられているということだろう。
大戦の首謀者は、旧王弟派の重鎮であった貴族だったはずだ。
父上が亡き後の俺に恨みがあったらしい。
ミレイアを失い、俺は旧王弟派と全面的に戦った。
それが、10年に及ぶ戦いに及んだ。
まず、大戦を回避するには父上の力が必要になる。
15歳で公爵家を背負うには早すぎたし、騎士団を背負うのも早すぎた。
5年頑張ったが結局あの大戦になったわけだから。
まずは、魔導具の作成が性急かな。
【解毒】も試さなくちゃ。
【毒】【治癒】から派生できる気がする。
俺は、夕食時父上の会った時に【解毒】をする。
バレないようにそっと。
毎日【解毒】をしていこう。
でも、春からの入学を考えると【解毒】を【自動化】出来る魔導具を作るのもありかもしれない。
そんなことを思案した深夜。
俺は、父上の執務室のあちこちに【自動化】【解毒】の魔導方程式を仕込んでいく。
【毒】【探知】をして、【解毒】をする【自動化】が可能な部屋になった。
これで、問題はないだろう。
ちなみに、父上の部屋には【気配遮断】というアビリティを使った。
なんだか、いろいろアビリティが増えていた。
【自動化】が何かしている気がする。
【収集】と言うアビリティがあったからこれの所為だろうか。
王都に来て1週間が過ぎた。
俺は、両親に連れられ王都のセレモニーホールへやってきた。
今晩は、貴族位の子供たちのお披露目がメインの夜会である。
「レイン様」
「やあ、ミレイア。今日も可愛いね。今日のドレスも似合っているよ。俺の指し色も入れているんだね」
今日のミレイアは、緑色のドレスに青色のブローチとヘアアクセサリーを付けている。
俺達がそう話をしていると5人組の男児が寄ってくる。
「お前何様だ!ミレイア様に」
おいおい、お前こそ何様だよ。ミレイアに「様」を付けるってことは伯爵以下の令息だろうに。
「ふむ、私はレイン・クロフォードだ」
「偉そうに!この方は侯爵令息のギルフォード・ハルバー様だ」
侯爵か。なのに、このマナーか。
「ギルフォード、よろしく頼む」
「不敬な」
侯爵令息が俺に手袋を投げつけた。
俺は、声を出して笑ってしまった。
いいだろう、受けてやろう。
俺は、手袋を手に取る。
「遊んでやろう」
「レイン様?」
「ミレイア、少し下がっていてくれ」
「はい」
彼女は、少し後ろに下がる。
それと同時に、周囲に人混みが出来る。
男児たちは、5人揃って心象武器を顕現させた。
だが腰が引けている。
戦い方など知らない、素人同然だ。
これで、向かってくるとはな。
「おいおい、心象武器まで取り出すのか・・・いいんだな」
「怖気づいたのか?下級貴族風情が」
いやいや、俺これでも王弟でもあるクロフォード公爵家の嫡男なんだがなぁ。
俺は、『アルマディオン』を顕現する。
そして、【身体強化】を施す。
身体が軽い。
これなら、全力で行ける・・・いや、手加減は必要だろうが。
「掛かってこいよ」
俺は、男児たちを煽る。
そして、左下段で構える。
それに、怒ったのか俺へと斬りかかって来る。
俺は、男児たちの心象武器を一閃で破壊する。
それと共に、彼らは床に倒れ込んだ。
「はぁ、これでも公爵家なのになぁ」
「流石、レイン様です。
「ああ、そっか。あれも、心象武器を破壊し続けてこうなったからだからな」
心象武器を破壊すると持ち主は、昏倒する。
それを続けていると敵対する者を平伏せる者として
まあ、それは騎士団長時代のことになるのだが。
「さて、どうするかなぁ」
そうしていると、警備をしている騎士団員がやってくる。
「レイン、何があった?」
騎士団員の後ろには父上がちょうどいた様だ。
「決闘を申し込まれまして、心象武器を顕現して挑まれましたので心象武器を破壊して昏倒させました」
「う、うむ。わかった。後は任せておけ」
父上は、現騎士団長である。
まあ、彼も頭を抱えていたが。
なんといっても公爵家に決闘を申し込む侯爵以下の男児たちなわけで不敬と取られても仕方ない。
「ミレイア。とりあえず、行こうか」
「はい、レイン様」
俺達は、中庭に向かった。
そして、噴水脇のベンチに座る。
「レイン様の剣技、前に見た時よりも研ぎ澄まされていました。
とっても、格好よかったです」
「ああ、ありがとう。まあ、ミレイアが見たあの頃から10年戦い続けたからな」
「そうでしたね」
ミレイアは、寂しそうな顔をする。
俺は、彼女の頭を撫でる。
「大丈夫だ。俺はもう1人じゃないからな。そうだろう?」
「はい、今度こそあなたの傍を離れません」
「俺も離さないさ」
俺達は、それからしばらくベンチで寛いでから会場へと戻った。
会場に戻ると国王がやってきていた。
俺達は、ひっそりと戻ったつもりだったのだがすぐに発見されてしまった。
「ふむ、ちょうど来たようだな。
では、レイン・クロフォード。並びに、ミレイア・フォレストよ。
こちらに来るのだ」
俺達は、国王の元へ近づいていく。
そして、彼の前に並ばされる。
「うむ、ここにいるレイン・クロフォードとミレイア・フォレスト両名の婚約を我が証明したことをここで宣言する。
レイン・クロフォードは、我が弟であるクロウド・フォン・クロフォード公爵の子息である。
ミレイア・フォレストは、アルフレッド・フォン・フォレスト侯爵の令嬢である。
共に、先日聖剣を顕現された。二人共」
俺達は、それぞれ胸に手を翳す。
「アルマディオン」「アニムスディオシス」
俺達は、お互いの心象武器を顕現する。
眩い光が発せられる。
『アルマディオン』も『アニムスディオシス』こういった演出が好きだったりする。
『アルマディオン』に関しては、先程の騒動では過剰な演出はなく静かに顕現されたのだから。
存在感を希薄にしていたと言うべきなのかもしれない。
俺達が顕現すると周囲はざわついた。
この光景は、前世でも2週間後の出来事だったように思う。
ただ、これで名実ともに俺とミレイアは婚約者となった。
学園を卒業後に、結婚することになる。
学園は、5歳から10歳までの5年間在籍することになる。
「レイン・クロフォードよ。
お主の剣技の腕前は、我も見させてもらった。
成人までの間、準公爵と言う爵位を授ける」
え?なんだそれは。
知らない爵位が出てきたのだが。
だが、断ることは出来ない。
俺は、片膝をついて跪く。
「謹んでお受けします」
そう答えるほかなかった。
「して、ミレイア・フォレストよ。
お主は、成人までレイン・フォン・クロフォード準公爵の婚約者として認めよう」
「謹んでお受けいたします」
ミレイアは、スカートを両手で摘まみカーテシーをする。
こうして、俺は準公爵という新たな爵位を戴くこととなった。
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前世
1月1日
ミレイアの『アニムスディオシス』に共鳴を覚え、レインは教会でプロポーズをする
その後、ミレイアを連れて公爵王都邸へ避難する。が、侯爵に怒られる。
1週間後
多くの見合い人の中からレインがミレイアの婚約者に選ばれる。
2週間後
国王から承諾を戴く。
4月
王立貴族学園に入学
ミレイアにクロフォード公爵家の大鷹の刺繍が刻まれる。
今世
12月31日
晩餐会会場でミレイアと再会
そして、公爵家&侯爵家が揃って国王に婚約の承諾を取る。
1月1日
洗礼の儀を受ける際、ミレイアが『アニムスディオシス』を顕現させた後
すぐに、レインが『アルマディオン』を顕現させたことによって
聖剣が2振り現れたことが知れ渡る。
ミレイアを連れて公爵家へ避難
1月2日
侯爵から見合い話が来ていたがすべて断っていることを告げられる。
魔導大図書館にて、多くのアビリティを取得
公爵の死の元凶である毒薬を無力化する。
1週間後
貴族令息による決闘・・・レインは一方的に叩きのめす。
前世(大戦終了時)での剣技を披露する。
国王によって、準公爵の爵位を叙爵する
準公爵は公爵と侯爵の間くらいの爵位と思っていただきたい。
なぜ、このタイミングで叙爵したかというと
旧国王派の陰謀である【毒】を無効化したこと
→国王は【毒】のことを最近知った(前世では知らなかった)
聖剣の所持者であること
マナーにおいて、一定以上の推移であること
剣技において、騎士団の一般兵以上の実力を有すること
レイン自体(ミレイア含む)を守る役割があること
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