6.俺達は、未来を変える為に進化し続ける

翌日。俺は、公爵家の馬車でミレイアを迎えに行った。

侯爵家に辿り着くと侯爵とアクア夫人に迎え入れられた。

ミレイアを待つ間、2人にいろいろ彼女とのことを聞かれた。

昨日の聖剣顕現で、ミレイアに注目が集まり幾つかの家から見合いを申し込まれたこと。

しかし、前日に国王陛下から承諾を得ていること。

そして、相手が公爵家であることを理由に全てを断っていることを知らされた。

まさか、そんなことになっているとは思わなかった。

もしかすると、前世でもそうであって公爵家の俺が教会で宣言したことや身分によって侯爵に目をつけてもらえたのかもしれない。

しかし、それでも1週間以上承諾を得られないほどの何かがあったのかもしれないな。

少し、用心しておいた方がいいのかもしれない。


「あの、レイン様。お待たせしました」


そう言って、彼女の両親と面談していた俺の元にミレイアがやってきた。

青色のケープコートを纏った彼女がそこには立っていた。

このケープコートは、前世でも2週間以上先に見ることになるコートだ。

青・・・我が公爵家のシンボルカラーである。

そう言えば、晩餐会も彼女は青を纏っていた。


「ミレイア、今日も可愛いね。

それに、そのケープコートとても似合うよ」

「ありがとうございます、レイン様」

「あら、良かったわね。ミレイアちゃん。

領地にいる時からどうしてもこの色のコートが欲しいって言っていたのよ。

でも、青と言ったらクロフォード公爵家の御色だからどうしようと思っていたけれど、レインくんがミレイアちゃんを貰ってくれるならこのコートを着ても問題ないわね」


なるほど、前世では婚約が認められた時に作り、今回は先に作っていたのか。

ミレイアの私物は、これから俺と同じ青色の物が増えていく。

春からの学園では、俺と同じ刺繍を入れることにもなる。


「もう、お母様ったら。内緒っていておいたのに」

「あらあら、ミレイアちゃん。可愛いわ」

「レイン様、行きましょう」


ミレイアは、俺の手を取って歩き始める。

すっかり、照れているようだ。


「ミレイア、あまり遅くならないようにな。

レイン殿もどうか、ミレイアの事よろしくお願いします」

「畏まりました。では、行ってまいります」


俺達は、その後侯爵王都邸を後にして大魔導図書館へと場所を向かわせた。

馬車では、ミレイアがやはり寄り添うように座ってきた。

俺達としては、いつもの事である。


「『アルマディオン』。まずは、どんな物から読んでいったらいいだろうか?」

『【効率化】【共有化】を優先に取得したい』

「【効率化】に【共有化】?」

『うむ、魔導具の中には【効率化】の魔導方程式を用いるものがあり、無駄な物を省き生産力をあげるそうだ。

【共有化】は、『アニムスディオシス』との情報の共有化をすることで取得率を上昇させようと思うのだ』


良くは分からないが、それがあれば楽になるのだけは分かる。

領主時代に、仕事の効率化をすることで無駄を省いたりしたし、情報の共有もする大切さは知っている。

まあ、それと同じと言うことだろうか。


『方程式が増えれば増えるほどやれることの幅が広がるだろう。

お主が、大戦時に対峙した強化兵士たちが施された【身体強化】やお主が欲しがっている【解毒】や【毒探知】なども見つかるかもしれぬ。

まずは、基礎から読むのもいいだろう』


『アルマディオン』と話をしていると、馬車が魔導大図書館へと辿り着いた。

そして、俺達は図書館の中へと入っていく。

光魔水晶の柔らかな灯りが付けられているが薄暗く感じる。


「さて、とりあえずアビリティを試してみよう」

「はい、頑張ります」


俺達は、適当に一冊ずつ本を手に取る。


「【ロード】」「【リード】」を呟く。


頭の中に、変な数字や文字が吸い込まれていくような気がした。

それは、なかなか止まらない。

5分ほど掛っただろうか。

その時には、吸い込む物が無くなったかのようになにも頭の中に浮かばなくなった。


『ふむ、これは・・・都合の良いことに【共有化】だな。よくやった、レイン』


『アルマディオン』がそう言うと俺とミレイアの間に繋がりが出来上がった気がする。

胸の中心から紐のような物が繋がっている感覚。

胸・・・『アルマディオン』とかな。


「ミレイア・・・わかる?」

「はい、レイン様と確かな繋がりを感じます。なんだか、とても嬉しく感じます」

「ミレイアとどこにいても繋がっている感じがするね」

「はい」


俺達は、武器鑑定を再びする。

アビリティに、【共有化】と【計算】が追加されていた。

なるほど、こうやって【ロード】を使うのか。


「よし、ミレイア。いろいろ、読んでいこう」

「はい、レイン様」


俺達は、それからいろんな本を【ロード】していった。

【効率化】を手に入れると【武器鑑定★★☆】が、【鑑定★★☆】になった。

武器以外でも、【鑑定】が使えるようになった。

それによって、俺達の行動が明らかに【効率化】した。

【鑑定】で本の中身が分かるようになったからだ。

そして、【自動化】を手に入れることで【鑑定】は自動で表示されるようになった。

【高速化】を手に入れて更に効率化することになる。

そして、【連鎖】【関連】【検索】【広域化】を取得すると座っているだけで取得できるようになった。

その日。俺達が取得した物は大量だった。

まず、【鑑定★★☆】が【鑑定★★★】になった。

それによって、【鑑定】で表示される物に魔導方程式が増えた。

これにより、魔導具から魔導方程式を【ロード】出来るようになった。

ちなみに、【ロード】と【リード】は共に【読み込む】と言う物に変わり【読み込む★★★★】になった。

ただ、俺が【読み込む《ロード》】でミレイアが【読み込む《リード》】なのは変わらない。

【計算】は、【高速演算】に変わり【並列処理】と言う物も増えた。

【共有化】は、いつしか【共通】になっていた。

【共通】には、☆がないので、★もないらしい。

【広域化】【検索】【鑑定】が揃ったことで【探知】を獲得した。

この【探知】指定した物を発見することが出来る。

つまり、毒探知の魔導具の元になった魔導方程式のようだ。

そして、【火】【水】【土】【風】【光】【闇】【治癒】などの方程式も手に入れた。

これにより、魔導具として使っていた魔導コンロの火や魔導水道の水なんかを自分で作り出すことが出来るようになった。

それによって、火なら火種から爆発まで様々なことが出来るようになったようだ。

ようだというのも使ったことがないからわからない。

あと、【身体強化】も覚えることが出来た。

これにより生前の剣技を今の体躯でも使えるかもしれない。

なんにしても、力を手に入れることが出来た。

毒探知もこれで可能だ。

やれることが増えたのは喜ばしい。

でも、毒探知をするには魔導具を用意する方がいいかもしれない。


「レイン様・・・今なら私達で毒探知の魔導具を作成できるのでは?」

「あ、そうだよ。方程式が分かってるんだから自分で作ればいいんだ。なんで、それに気づかなかったんだろう。ありがとう、ミレイア」

「レイン様のお役に立ててうれしいです」

「でも、明らかに以前とは違う力を身に着けてしまったから気を付けないとな」

「そうですね、一応【隠蔽】でアビリティを【リード】だけにしておきましょう」

「それもいいね、流石ミレイアだ」


俺は、ミレイアの頭を撫でる。

彼女の目が細まる。

俺達は、結局3時間ほど図書館で過ごしミレイアを侯爵王都邸に送って帰るのだった。

そして、俺は公爵王都邸に戻ると邸中を歩いて回るのだった。



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アルマディオン★・アニムスディオシス★

意志を持つ武器インテリジェンスウェポン

アビリティ:

【読み込む★★★★】【鑑定★★★★】

【高速演算★】【並列処理★】【探知★】

【連鎖★★★】【関連★★★】【検索★★★★】【広域化★】

【隠蔽★】【強化☆】【弱化☆】【構造★】【身体強化☆】

【火☆】【水☆】【土☆】【風☆】【光☆】【闇☆】【治癒☆】


アビリティの★

★は最大で5個まで、要はLV5までと言うこと

☆はLV1ではない


次回、ある夜。

レインは、社交に参加することになる。

そして、過去改変の影響が襲い掛かる。

7.俺は、抗い続ける。

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