第58話「こだわり」
「うぬぬぬ…」
美術の時間、隣の席で西森さんが唸り声をあげる。なんだ?
「どうしたのさ、西森さん?」
「いや、美術の課題さ、なんか納得出来なくてさ」
美術の課題と言うと今回は身近な物の水彩画だ。僕は無難に教室の机を描いてみた。文字通り身近だしね。
気になって西森さんの絵を除き込むと教室全体を描いてある。凄い。机だけの僕とは大違いだ。
「凄く良く描けてると思うけど?」
「いや、この黒板の表現が納得いかない。あと窓とか…」
僕から見たらめちゃくちゃ上手いのに西森さんは納得いかないのか。本人にしかわからない何かがあるのかな。
「だけど課題の提出今日までだよ?」
「でもでも、どうせ描くなら納得いくものを出したいじゃあないか!」
まあ、気持ちはわからなくはないが…。
「ねえ、西森さん。細部にこだわる気持ちはわかる、僕もプラモとかこだわるからね、こだわりって力だとは思う」
「うん?」
「でもこだわり過ぎて締切に間に合わないとせっかくのこだわりが無駄になるよね?」
「そ、それはまあ…どんなに良い漫画でも締切過ぎたらダメだもんね」
「そう、こだわるのはいいけどさ、そこばかりこだわるのはもう固執と同じだと思う。まずは、締切を守って課題を提出しようよ?」
「なるほど、村上くんの言も一理あるな!まあでも締切は放課後だ、ギリギリまでは粘ってみるよ!」
たかが、って言うとあれだけど、学校の課題でここまで本気で取り組むのはある意味西森さんらしいな。
今日は村上語録。「こだわりは過ぎると固執になる」
まあ、僕みたいな凡人は程々が一番だと思う。
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