第54話「ホラー」

「ぎゃあぁぁァァッ!来たァァ!来るなー!」


 ヘッドホンの向こうから西森さんの絶叫が聞こえる。

 今日は二人でネットで通話しながらゲームをしているんだけど。ネットならお互い自宅に居ながら同じゲームで遊べるからと誘ってみた。

 今やってるのは対戦ゲームで、五人プレイで殺人鬼一人から四人のサバイバーが逃げるというサバイバルホラーゲームだ。殺人鬼から逃げるからホラー感満載なんだけど、ぶっちゃけギミックありの鬼ごっこゲームだ。


「うわぁぁ!殺された!」


 僕も西森さんも逃げる側、サバイバーだが西森さんのキャラが殺人鬼に捕まった…というかめっちゃ叫んでるけど家の人何も言わないのかな?


「あははははは!殺された!いや、めっちゃ怖いけど面白いな!」


 西森さんが興奮気味に言う。何で殺されたのに楽しそうなんだろ…。


「そうだね、ホラーだしね。有名なホラー映画のキャラクターも居るよ。貞子とか」


「マジで!殺人鬼側も色々キャラクターいるんだな!」


「課金キャラだけどね」


「しかし不思議だよなあ、ホラーってさ、めっちゃ怖いじゃん。このゲームも殺人鬼に見つかったらリアルに冷たい汗でるし叫んじゃうよ」


「さっきめっちゃ叫んでたね…」


「このゲームも怖い。映画や小説もめっちゃホラーはある。怖いだけならジェットコースターとか絶叫マシーンとかもある。でも楽しいというか、見たい、やりたい、乗りたいって思う」


「まあ、苦手な人もいるけどね」


「でもだよ村上くん、怖いって危機を察知したり回避したりするための感覚だと思うんだ。なのに何故人間は怖いを楽しもうとするんだろうか?」


「あー…一説には生きてる事を実感するとか、いうよね」


「まさに、これも人間だけの感覚なのかも知れないな!」


「でた、久々の人間だけシリーズ!」


「お、マッチングしたぞ、次の試合だ!」


 まあ、西森さんが楽しそうで何よりだ。



 今日の西森語録「怖いを楽しむのも人間だけ」

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