第47話「せせらぎ」
「うひゃぁ!!」
昼休み、これから昼ごはんだってところで西森さんが叫ぶ。叫ぶ?変な声だ。
「ご、ご、ご!」
何やら言葉になってないが青ざめた顔で床を指差す。その先には黒光る羽の割と大きめな例の虫が。
「あー、ゴキブリか」
そのままゴキブリは机の下を抜けて途中何人かのクラスメイトに悲鳴をあげさせて廊下まで走って行った。
「ふー、怖かった…しかし不思議だよな、ゴキ…いや『せせらぎ』って。何で見たらあんな嫌な不快な気持ちになるのか」
「何で『せせらぎ』だよ、伊坂幸太郎かよ」
ゴキブリを『ゴキブリ』と口にするのも嫌だから『せせらぎ』と呼ぶ、伊坂幸太郎の小説の話だ。
「さすが村上くん!伊坂幸太郎も通用するとは!」
「相手が知ってるかどうかも確認しないで用語を使うのはオタクの悪いところだよ」
「でもさ、ホントなんであんな怖いかね、せせらぎは。確かに黒くて大きいけどそれを言ったらカブトムシも大概だと思うんだよ、なのにカブトムシはせせらぎ程は不快じゃない。根本的な、こう、本能に訴える不快さがあるよ…」
「あー。まあ、カブトムシは部屋に急に出たりしないからね、ゴキ…せせらぎと違って。あとなんか羽とかテカってるしね、せせらぎは」
「確かに!でも部屋に急に出てきたらカブトムシもせせらぎ並みに気持ち悪いかも!まあ、でもせせらぎが出たのが教室で良かった!自分の部屋なら泣くところだよ…」
「それは確かに間違いない」
今日の西森語録「せせらぎ(ゴキブリ)は本能で嫌い」
しかしもうだいぶ寒くなったのにまだ出るんだな、せせらぎ。
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