第41話「加速する時間」
「昨日さー、ちょっと体調悪くて病院行ってたんだけどさー」
昼休み、自分で作ったというお弁当のだし巻きをつまみながら西森さんが言う。
「ああ、そう言えば休んでたね。体調不良だったんだ」
学校を休む時は今までもあったから心配ではあるがさほど気にしてなかった。西森さんがいない日は退屈ではあるが。というか絶対この前の上着を忘れた時のせいだろ…。
「まあ、結論から言うとインフルエンザでもコロナでもなく、ただの風邪で薬が効いたから今日来てるんだけどさ。昨日朝から病院行ったんだけど、めっちゃ混んでる訳よ。大半がお年寄りだ」
「あー、午前中はめっちゃ混むよ。余裕あるなら夕方に行く方がまだ空いてるんだけどね」
「まあ、体調悪かったからな、早めに行きたかったんだ。そしたらさ、朝の9時から待ってるのに診察に2時間も待たされてしまった。当然、私以外のお年寄りもそれくらい待たされてる人もいる訳よ」
「2時間は長いな。軽く映画一本見れちゃう長さだね」
「まあ、私は持ってた文庫本で時間を潰してたんだけどさ…一緒に待ってるお年寄りはずっと何もせず、ただ座って待ってる訳よ!凄くない?本を読む、携帯やスマホを弄るとかしないで2時間以上ただ待ってるって!」
「そう言われたらそうだね、僕なら苦痛だよ。でもお年寄りなら慣れてるんじゃないかな?」
「思うにだよ、村上くん。年寄りにとっては2時間は大した時間じゃないんだよ、もはや一瞬なんだよ…」
「え、どういう事?」
「例えばだ、1歳の赤ちゃんにとって1年はとても長い。何故なら1年は人生の1/1の長さだからだ。ところがだよ、80歳の人には1年は1/80でしかない」
「なるほど、感じ方が違うわけか!」
「そう!私たちにはまだ1年は1/17だ、長く感じる2時間も年寄りならそりゃ一瞬だよ」
「まあ、だとしても2時間あれば何か本読めるから僕なら読みたいな〜」
「それは私もだ!…体調が良ければ」
今日の西森語録「年寄りの1時間は一瞬」
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