第45話「ほこり」

「なあ、村上くん。このネズミ色の塊は何だと思う?」


 放課後、掃除当番の西森さんが箒で床を掃きながらチリトリの中を見せてくる。


「え、ほこりじゃないの?」


「そう、これは埃だ。でもだよ、この埃は一体何だと思う?」


「え!な、何だと言われても考えた事なかったな…見たところなんか繊維質に見えるけど…」


「そうなんだよ、これは繊維、つまり糸クズだ!不思議に思わないか?何故こんな糸クズが固まってるか!」


「確かに。何なのこれ?」


「この糸クズはだな、みんなが着てる服から出てるんだよ」


「え!?ど、どこから出てるんだ…」


「どこ…というかあちこち?ほら、ようく見て?」


 西森さんがそう言って制服の袖を見せてくる。


「よく見ると人間のうぶ毛の様に細かい繊維が見えるだろ?これが擦れたりして落ちるんだよ」


「へえ…これが集まって埃になるんだ」


「ところがだよ村上くん。世の中にはポリエステルという埃が出ない、出にくい繊維もあるんだ。つまりだよ、学校の制服から下着まで全部ポリエステルにすればこの掃除当番は無くなると思うんだ!」


「なるほど…でも残念ながら見てよこの雑巾。埃だけでなく土や砂まで付いてる。いい考えだと思うけど掃除はなくならないね」


「く!ならば校庭もコンクリ張りにすれば…!」


「どんだけ掃除したくないんだよ!」



 今日の西森語録「ポリエステルにすれば掃除はなくなる」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る