第36話「国語の時間」
「おや?珍しいな、数学以外が悪いのは」
返却された僕の期末テストの答案を覗き込みながら西森さんが言う。まーた勝手に覗き込んで…まあ、もういいけど。
「新しいゲームついついやっちゃってね、実はあまり勉強しなかったんだ」
言い訳がましいとは思うが事実だ。
「古文が悪かったのか」
「数学はまあ、この前西森さんが重要性を言ってたから少しはマシになったんだけどね。古文はホント必要感じない」
「わからんでないが、古文ほど面白いものはないぞ!」
「面白い?」
「例えば『いとおかし』とかいうのは現代でいうならば超エモいとかそういう意味合いだ。他にも『やむごとなし』とか推しみたいな意味だし」
「え、ホントに?」
教科書を調べると、うんまあ…ちょっとニュアンスは違うが確かに似たような意味ではあるな、「いとおかし」は趣きがあるとか「やむごとなし」は高貴な人と書いてるじゃないか。まあ…確かに推しは高貴な存在だけれども。でもそうやって自分の中で関連付けて覚えてるのか。
「思うにだよ、村上くん。この古文ってヤツは昔は日常的に使われてたんだよ。今言ったエモいとか推しって言うみたいに昔は使ってたんだよ」
「なるほど」
「つまりだ、何が言いたいかというと日本人はどんどん新しい言葉を増やし続けている、どんどん進化しているんだ。今私たちが話してる言葉も、もしかしたら未来には古文になっているのではなかろうか?」
ああ、なるほど。僕たちは当たり前の様にエモいとか尊いとか使ってるけど、何百年も先の未来では古文として「エモいってどういう意味だっけ?」と授業で頭を悩ませる学生がいるかも知れないのか。
「そんな風に考えると古文も割と面白く感じないか?」
「確かに、少し興味でたよ」
今日の西森語録「日本人は新しい言葉を増やし、進化させ続けている」
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