第32話「君の名は」

「聞いてくれ、村上直樹くん!」


 昼休み、いきなり西森さんにフルネームで呼ばれてドキっとする。え、なんでフルネーム?


「何でいきなりフルネームなんだよ、西森優子さん」


「うわ、フルネームで呼ばれると思ってたより恥ずかしいな!」


 …まあ、いきなりだと余計にね。恥ずかしさ1.5倍くらいあるよ。


「昨日従姉妹が来てたんだけどさ、みんな名前が可愛い訳よ。『心愛ここあ』ちゃんとか『優愛ゆうあ』ちゃんとか…私、優子だよ?今時同級生でも名前に『〜子』って付いてる女子、知る限りは居ないんだよ」


「あー。確かに居ないね」


「別に名前に不満がある訳じゃない、むしろ今時かえって珍しいから気に入ってはいるんだけどさ、名前って不思議だと思わないか?」


「不思議?」


「例えばだ、よくお婆ちゃんが時代劇チャンネル見てるんだけど昔は『お雪』とか『お絹』とか呼ばれてる訳よ。昔こそ『子』は付いてない。いつから『子』が主流になり『〜子』みたいなのが流行ったのか、そしてまた現代では『〜子』って名前が殆どない。名前って流行り廃りが激し過ぎないか?いずれはまた『子』が流行る時代が来たりするんじゃなかろうか?」


「あー、確かに。男子だって昔みたいな名前見ないよね、助三郎とか格之進とか」


「水戸黄門じゃん!よく知ってるなそれ!」


「うちも爺ちゃんち行くと爺ちゃんがよく再放送見てるよ時代劇」


「年寄りが時代劇好きはどこのうちも同じなんだな!しかしこんなに流行り廃りが激しいとそのうち今じゃキラキラネームって呼ばれる名前も普通になったりする時代がくるのかも知れない!」


「キラキラネームは…どうかなあ…」



 今日の西森語録「名前の流行り廃りは激しい」

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