第31話「もみじとかえで」

「見ろよ村上くん。綺麗な紅葉もみじが落ちてるな」


 学校の帰り道、商店街の街路樹が散って落ち葉が歩道を彩る。銀杏よりも紅い葉っぱが多い。何の木なんだろ?


「綺麗だね。落ち葉の絨毯だ」


 西森さんが一枚葉っぱをひょいっと拾いあげる。


「これは紅葉と楓、どっちだと思う?」


「えー?わからないな?」


「これは楓の葉っぱだ。この辺りの街路樹は楓の木みたいだな」


「へぇ、詳しいね西森さん」


「しかしおかしいと思わないか、村上くん。紅葉狩りってよく言われるが楓狩りって皆んな言わない。何故だと思う?」


「え、知らないな?紅葉の方が綺麗とか多いとかじゃないの?」


「実はだな、村上くん。紅葉って楓なんだ」


「え!?何それ!」


「紅葉って木はないんだよ、紅葉の大半は楓なんだよ。紅く色づく葉っぱの総称みたいなもんなんだけど、大半は楓だ。なのに、楓狩りと言わず紅葉狩りという。何だか不憫な葉っぱだよ…楓ちゃん…」


 そう言われると確かに楓狩りでもいい気するし、むしろ紅葉って何だ?とか思ってしまうな。


「まあでも楓以外の色づく葉っぱも紅葉って言うなら仕方ないんじゃないかな、総称で紅葉って言われても」


「冷たい!村上くんは冷たい!もっと楓ちゃんの気持ちも考えてあげて!」


「ええっ!?」



 今日の西森語録「紅葉の大半は楓」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る