第21話「どんぐり」

「おや、どんぐりだ」


 帰りの道、ふと足を止めて西森さんがアスファルトに落ちてるどんぐりを拾う。キョロキョロと周りを見渡してるがどんぐりの木を探してるのか。


「この辺、カシの木とかないし、誰かが落としたのかもね」


 駅までの帰り道、少なくともどんぐりがなる木はないが、少し離れたとこにある神社ならひょっとしたらどんぐりがなる木があるかも知れない。おおかた子供が拾ってきたのを落としたのだろう。


「不思議だよね、どんぐりって。食べるわけでもないし貴重って訳でもないのに落ちてたら拾いたくなる。何だろう、この『木の実』感が魅力的なのかな?」 


 まじまじとどんぐりを見つめながら西森さんが言う。


「わかる、何か特別感あるよね、どんぐり」


 確かにどんぐりってどんぐりコーヒーとかあるし食べれなくはないけど一般的に食べるものじゃない。でも何かしら『拾いたくなる』。


「まあアレは探したり見つけたりする過程が一番楽しいんだよな〜。幼稚園の頃は引率の先生に連れられどんぐり拾いやってたな、中々見つからなくて一人で林の奥にまで探しに行ってはぐれたり…」


「西森さんらしいな。あれ、園によってはあらかじめどんぐりを敷地に撒いて置くとかあるらしいよ、西森さんみたいな子がいるから」


「何それ!偽装どんぐり拾いじゃん!」


「偽装は面白い言い方だな…」


「とりあえずさ、神社寄ってかない?」


「めっちゃどんぐり拾う気じゃん!!」


 まあ、いいけどね。僕も拾いたいし。あればいいな、どんぐり。



今日の西森語録「どんぐりは不思議な魅力がある」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る