第24話「大人はわかっている」

「聞いてくれよ、村上くん!」


 通学路でばったり会った西森が何やら不機嫌、というか怒っている。


「ママがさ、スマホはやっぱりダメだとか言い出す訳よ!意味わからなくない!?」


「この前許可が出たって言ってたアレか」


 しかも今年西森さんは誕生日過ぎてるから来年だってなってたヤツか。


「なんかさ、今SNSとか動画配信とか、色々未成年が巻き込まれる事件が多いからやめとけって言う訳よ。この私が!そんな事にスマホを使う訳ないのに!」


 西森さんは絶対僕と同じでネット漫画や小説が読みたいだけだよなあ。ガラケーでも小説なら読めなくはないけど読み込みがかなり遅いし。


「大人はホント、僕たちの気持ちをわかってないよね…」


「そこだよ村上くん…大人は本当にわかっていないのだろうか?」


「ん?」


「大人はわかってくれないなんてセリフ、言うのは子供側だ。でもだよ村上くん。大人だって『かつては子供』だったはずなんだ。つまり大人は『大人も子供も両方経験』している。なのに、本当に私達の気持ちがわからないのだろうか?」


「…興味深い推論だね?」


「ホントはさ、気持ちをわかってるけど敢えてわからないフリしてるんじゃないかな?」


「名探偵西森さんはその理由をどう推理するの?」


「今回で言えば、スマホが危ないから買わないんじゃなくて、スマホが高いから買いたくない、とか?」


「めっちゃあり得そう!」


「だいたいママだってスマホ持ってるのに私には買ってくれないのズルいよね、もし高いからって理由なら新しくなくていいから私のガラケーと交換でもいいのに!」


「まあ、安いのもあるだろけど新しいiPhoneなんな10万以上するし月額もガラケーよりかかりそうだしね…お父さんやお母さんはAndroid?iPhone?」


「ママはiPhoneだね。パパは私と同じガラケー」


「…それ、お父さんも欲しいって言い出してお母さんが困ってるパターンじゃあ…」


「!?」



今日の西森語録「大人は本当はわかっている」


 この推論がもし当たってるなら、西森家はお母さんが強い家なのかも知れないな。

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