第16話「タバコの煙」
「ねえ村上くん、私、臭くない?」
校門前でばったり出会った西森さんが挨拶もそこそこにいきなり聞いてくる。いや、朝イチで女子が聞いてくる質問じゃないよ。
「朝からどうしたのさ、ニンニクでも食べたの?」
「いや、そうじゃなくて。今朝家を出る時パパがタバコ吸っててさ、わざとじゃないんだろけど思いっきりタバコの煙を顔面に食らったのよ。どう?臭くない?」
そう言って僕の顔の前に顔を近づけてくる。鼻先が触れそうな距離だ。
待って、男子としてはめっちゃドキドキする距離だしここで西森さんの匂いを嗅ぐのはちょっとヤバいだろ。でも何かいい匂いがする、シャンプーだろうか?
「す、少なくともタバコの臭いはしないかな?」
「良かった!昔からパパは吸ってるし私も特に気にしないんだけど、タバコ臭い高校生ってなんかヤバいじゃん?あ、でも普段は私の前では吸わないんだよ、パパも。しかしだ、村上くん。タバコって不思議だよな?」
「不思議?何が?」
「タバコだよ!タバコって電子タバコとかも今ならあるらしいけどよくよく考えて?あれって『火を付けて煙を吸ってる』んだよ?普通に考えたら有り得なくない?」
「まあ、僕達は未成年だし少なくとも僕は吸った事ないからわからないけど喫煙する人は美味しいって言う人もいるから…」
「いや、そうじゃくて!この間の海老と蟹だよ!アレはわかる、グロテスクでも食べ物が無かったなら食べようってなるのはわかる。でもだよ村上くん!『タバコを初めて吸った人』は何で葉っぱに火を付けて煙を吸おうと思ったのだろうか!?」
「!!」
確かに。わざわざ火を付けた煙を吸うっておかしい。食べ物でもなく、必要な事でもない。そもそもタバコの存在を知らないと煙を吸おうって普通思わないよな。
「何か煙を吸うきっかけがあったとしたらそれはどんな状況だと思う?」
「普通に生きてて煙を吸うとなると…火事?」
「それもあるが火事で煙を吸うだとむしろ命に関わる。私は焚き火じゃないかって思ってる!」
「あー、なるほど!」
「ゴミを燃やすか暖を取ってたかわからないが、焚き火をしててたまたまタバコの要素がある葉っぱだか枝だかを燃やしたんじゃないかな?んで、モクモクと上がる煙を吸ってしまったんだよ。そこで初めて『アレ?この煙なんかいいぞ?』ってなったのではなかろうか?」
「有り得そう」
「ちょっとトラックの排気ガスとかも良い臭いって思う時あるし」
「いやそれはちょっとわからないかな」
「え!うそ?私だけ?」
今日の西森語録「タバコは焚き火の産物」
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