第38話「ストーカー」

「この前、従姉妹が遊びに来てたって言っただろ、優愛ゆうあちゃんがさ…」


 学校帰り、先生の手伝いを頼まれていつもより遅い帰り道、西森さんがしんみりと話す。まだ17時だというのに冬の日暮れは早い。


「優愛ちゃん、コンビニでバイトしてるんだけど、なんか客の男にストーカーされたらしくてさー」


「え、怖っ!大丈夫だったのそれ?」


 というか優愛「ちゃん」とか呼ぶからてっきり小さい子なのかと思ってたらバイト出来る歳の子だったのか。


「まあ、彼氏が車で送り迎えしてるらしくて安心と言えば安心なんだけどね、店の外でシフトが終わるまで待ち伏せしてたらしいんだよ」


「うわぁ…怖いのもあるけどイタい人だなあ」


「それもさ、田舎のコンビニだから駐車場広いのにさ、車で待ってるとかじゃなく普通にただ店の外で立って待ってるんだよ?この寒い中を!」


「最近の話なのか」


「17時から22時のシフトだからさ、5時間あるわけよ。んで、優愛ちゃんが出勤した時には既にいたらしいから…冬のコンビニの駐車場で5時間!これ、凄くない?」


「めっちゃ怖いじゃん」


「いや、確かに怖いんだけども!5時間も寒空の下でずっとただ何もせず『待ってる』ってさ、もう人智を越えてるよ!そりゃ今時は村上くんのようにスマホを持ってるだろうから時間は潰せるかもだけど、5時間も外でスマホってのも凄くない!?」


「いや確かにスマホゲームやネット小説とか読めるけど外で5時間は嫌だし僕は無理だ」


「ホント、ストーカーって普通じゃない、計り知れないパワーがあるよ…無駄なパワーが!」


「で、それ、どうなったの?」


「彼氏がめっちゃ脅して来なくなったらしい!」


「何それ彼氏も怖い」



 今日の西森語録「ストーカーは人智を越えてる」


 ちなみに後から聞いた話だと、優愛ちゃんは20歳の大学生らしい。割とお姉さんだった、優愛さんだった。

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