第10話「生きる意味」

「村上くんは何のために生きてるんだい?」


 西森さんがよく食べてるから気になって買った味噌カツおにぎりを僕も買ったのだが、一口食べた所で声をかけられる。西森さんも味噌カツおにぎりを食べている。


「どうしたの?いきなり」


 まあ、いきなりなのはいつもの事だけど。


「今読んでる小説が何のために生きるか?をテーマに主人公が自分探しの旅をする話なんだけど」


「ふうん、西森さんが読みそうにないタイプだね」


「いや表紙と挿絵が好きなイラストレーターさんだったんだ」


 あー、めっちゃわかる。オタクあるあるだ、中身より絵で買っちゃう。


「せっかくだから読んでるんだがね、なんかこう…モヤる!」


「モヤる?」


「そう、自分探しって何だよ、自分はそこにいるだろ!何のために生きてるか?そんなものは決まってないから自由なんじゃないか!」


「決まってないから自由…」


「そう!人生は決まってない!仮にだ、『貴方は世界を救うために生きてます、でも救った後死にます』って決まっていたら?嫌だろ?少なくとも素直に世界を救えない!誰かに決められる『何のために』は真っ平ゴメンだ!そうは思わないか?」


 何のために生きるか。それは決まってないから自由である。何だろ、不意に僕の胸にストンと落ちた。僕は何のためにかを無意識に探していたのかも知れない。そして、それは『決まってない』じゃなくて僕が『決めてない』だけなんだ。でも。


「でも宝くじが当たって働かずに毎日遊んで暮らせるって決まってたら多分受け入れるけどね、僕は」


「……それは、私も受け入れよう!」



 今日の西森語録「何のためにか決まってないのは最高に自由」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る