第9話「数学の時間」

「うわ、酷い点数だな村上くん」


 返却された中間テストの答案用紙を覗き込みながら西森さんが言う。


「勝手に見るなよ〜」


「他の教科はそうでもないのに数学は酷いね」


 西森さんは成績は全体的に良い。よく考えると弱点はないな?この娘…いや、あったわ、めっちゃディープなオタクだったわ。


「何か苦手なんだよな〜。別に算数が出来たら良くない?因数分解なんて人生で要らないでしょ」


「おやおやおや?らしくないな村上くん!数学の重要性を理解されてない?この世は数字で出来ているんだよ?」


「何そのラノベの設定」


「いいかい、村上くん。例えば君がトイレの水を流したとしよう。もし数学が無ければ水が出なかったり、逆に出過ぎて溢れるかも知れないんだ!」


「何それ怖い」


「身近で言えば、だよ。水道の蛇口を捻ったら水が出るのは水圧、水道管の径、距離など…数学を使って机上で計算してるからちゃんと出るんだ。水道管が太過ぎても水圧が弱過ぎてもでない」


 そう言えば西森さんはお父さんが建築設計関係の仕事って言ってたな…詳しいな。


「他にも身近な物だと村上くんが持ってるスマホとかだ!羨ましい、私はまだ持ってないのに」


「まだガラケーだよね、ガラケー使う女子高生とかレアだよ、むしろガラケーってまだあるんだ」


「うるさいな!そのスマホだって元を言えば0と1の集合体だ。君が使ってるアプリだって数字で出来ている。電気信号は0と1、なんて言えば小難しいがなんて事ない、電気スイッチがオフなら0、オンなら1みたいな。スマホなら莫大な0と1があるはずだ」


「聞いたことある、ビット、バイト、ギガ、ってヤツだ」


「そうそう。結局世の中の殆どは数字で出来ていて、計算によって導かれてる。数学は大事な学問なんだよ」


「でも苦手なんだよな〜」


「次は私が教えてあげよう、代わりにスマホを買う相談に乗ってくれ!やっとママから許可がでたんだ!」


「お!西森さんも遂にスマホデビュー!いいね!」


「次の誕生日だけどな」


「……来年じゃん」




今日の西森語録「世界は数字で出来ている」






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